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2017/11/08
“ダメだといわれるところが長所。自分の価値観を大切に生きる” ~映画監督・黒沢清が語る映画人生~【後半】

2017年10月22日(日)、東京・恵比寿にある東京都写真美術館ホールにて、「黒沢清監督が伝授する演出のポイント」が開催された。
10月16日(月)から22日(日)まで開催されていた「SSFF & ASIA 2017 秋の上映会」内のスペシャルイベントとして実施された本企画では、最新作『散歩する侵略者』が今秋劇場公開され注目を集める映画監督・黒沢清氏をゲストに招き、黒沢監督のキャリアや、映画論についてトークショー形式で伺った。

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「これで最期かと思った」最大のスランプ

Q. 最新作の『散歩する侵略者』は夫婦愛がテーマですが、テーマはどう選んでいるのですか?

黒沢:
僕は別にホラーの専門家ではなくて、実はいろいろなものを撮っているんです。ひとつの作品を作ると、今度は全く違うジャンルの作品を撮ろうと思いますね。ホラーやサイコスリラーを撮った後はもっと平和的なものを撮りたくなる。
そうやって撮ったひとつが『トウキョウソナタ』(2008年)でしたが、そのあと全然撮れなくなりました。家族とかをテーマにした作品を撮ると、とたん作家的な監督になってしまい、娯楽映画の枠から外されてしまうんでしょうか。「もうこれで最期か」と思いました。

Q.どうして撮れなくなくなったのでしょう?

黒沢:
理由は様々ですが、そのひとつは東京近辺で撮れる作品はすべて撮り尽くしてしまったように感じたことでした。『トウキョウソナタ』の後にも何本か企画を進めたのですが、撮影地が中国だったり、それも戦争映画だったりで、スケールが大きくなって実現しないまま来てしまった。その頃の企画のひとつでようやく実現したのが『散歩する侵略者』です。
もうひとつは年齢的な理由ですね。海外で認められてポジション的にも敬遠されて声がかからなくなってしまった。それで3~4年撮れなかったですね。

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Q.スランプをどうやって抜け出したんですか?

黒沢:
転機は湊かなえさん原作の『贖罪』(2012年)という連続ドラマです。なんでもいいからとにかく撮りたかったんです。「このまま行くともう一生撮れないぞ、何でもやらなければ」と思っていた矢先にWOWOWから声をかけていただいたんです。深く考えずに「やります」と答えて、原作モノを作りました。
原作モノはほぼ初めてだったのですが、原作のテイストをそう壊さず作ることができ、原作者にもWOWOWにも喜んでいただけました。これまでやったことのなかった俳優たちとも出会えましたし、自分もこんなにうまくできるんだと、新鮮な発見をしました。それ以来、業界的にも原作モノをこなせる監督しての評価をいただきましたし、僕自身新しい物語、新しい俳優とやりたいという欲望が湧き、再びうまく回り始めました。

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「誰のアドバイスも聞くな」が若い人たちへの助言

Q. ご自身の若いころと現在とを比べて、映画監督としての成長をどう捉えていらっしゃいますか?

黒沢:
あまり、考えないです。成長しているか、後退しているかは。一つだけ言えるのは、撮り続けたいということです。年齢に適した何かがあるかは、その年齢になって撮ってみないとわからない。作らないと自分の年齢が作品にどう影響するかわからないです。だから撮り続けたいんです。成長かどうかは一切関係なく。

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Q. 若い監督たちがどのような努力をすればいいか、アドバイスをするとしたら?

黒沢:
アドバイスをするとしたら、「誰のアドバイスも聞くな」ですよ。僕を含めて、先輩はああだこうだ言うんです。そういうのは一切無視ですね。僕も誰の言うことも聞きませんでした。
やはり、作っていらっしゃる方は自分の中に何か作りたいという欲望と、これが面白いという価値観があるはずなんです。揺らぐ瞬間はあると思いますし、固執する必要もないですが、それは必要なものです。みんなそれを持っているから作っているんですね。
それをなるべく豊かに拡大させて、揺らぎつつ自分の価値観を守りつつ成長させていけば、間違いないと思います。そのために必要なことは適宜、過去の作品や先達から盗めばいい。
あとは、どうやってそれを表現して観客に伝えるかいろいろと試して腕を磨いてください。

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「ここがダメだ」という先輩はいると思うんですね。ただ、ダメだといわれるところが長所なんです。同業者に「ここすごいね!」と言われることのほうが危ない。理解できたものは枠にはまった個性だから。同業者にはさっぱりわからないことこそ、その人の核ですよね。
揺るぎない自信をもって他人のアドバイスに流されない。あるいは他人のアドバイスをうまく利用して、自分の確信を強めていく。それが一番だと思います。もちろん、そのためには撮り続けなければなりませんが。

(了)


写真:杉田 拡彰
構成:大竹 悠介


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