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2015/05/21
是枝裕和 監督 「#3 日常を立体的に演出する声と音 そしてロケーション」動画書き起こし配信!

昨年2014年11月2日開催した映画監督 是枝裕和氏を招いたクリエイターズパーティー。
2014年11月末~12月頭にかけ配信した動画の書き起こし第3弾「日常を立体的に演出する声と音 そしてロケーション」を配信していきます。

横浜のショートフィルム専門映画館、ブリリア ショートショート シアターにて映像関係者・クリエイターの方々を対象とした交流会「クリエイターズパーティー」が開催された。13回目を迎えた今回のゲストは、『そして父になる』で第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞も記憶に新しく、現在、15年初夏公開予定の『海街diary』を制作中の是枝裕和監督。「カタチを決めない“カタチ”」をトークテーマに是枝監督の映像論をたっぷりと語って頂きました。

スピーカー
・ゲスト 監督 是枝裕和
・司会 ブリリアショートショートシアター支配人 奈良太一
動画も是非ご覧ください!
日常を立体的に演出する声と音 そしてロケーション

■夏川 結衣さんに絶交を宣言された!?

奈良:キャスティングについてですが是枝監督の作品は、脚本がピッタリなキャスティングをされているイメージがするのですけれども、当て込みで脚本を書かれることはないのですか?
是枝:キャストありきで書いたこともあります。「歩いても 歩いても」の樹木希林さんは、樹木希林さんで書きました。でも後は、キャスティングが外れちゃったときが困るので、1校はそれほど決めずに書いておいて、キャスティングが決まって、お会いして、声を聴いて、
奈良:声!?
是枝:声。 顔を見て、声を聴いて、こんな感じだなと、自分の中に入れてその人の声で書き直す。役柄が全く変わってしまうことはないですが、役柄と本人のちょうど間ぐらいに着地させる思いで、なるべくその人の声で書き直していきます。だから僕が第1校で書いた役よりは、クランクインまで、ちょっとずつ本人に寄っていくのですよね。最初にあて書きして、あたかも彼らを前提に書いているように思われるかもしれませんが、それはキャスティングが済んで衣装合わせが終わったころにようやく決定稿が出てくるので、、、って言っても僕が遅いだけですけど、そこまでそういう書き直しを行っています。
奈良:そういう風に作られているのですね
是枝:意外と、衣装合わせ等で出てきた彼らの言葉を、最終的に台本に反映させるっていうのは、ありますね。
奈良:あれですね!是枝ノートというやつですね!
是枝:・・・・うん
奈良:(笑い) いろいろ現場でメモを取られているという・・・
是枝:とりますよ
奈良:どういうことが書かれているのですか?
是枝:それは・・・「歩いても 歩いても」の時に夏川 結衣さんと話していて、夏川さんは結婚もされてないしお子さんもいないけど、例えば、ああゆうシチュエーションで、子連れで、再婚した時に、相手の男の実家に行って、お姑がいて、「何を言われたら嫌?」って聞いたら、女の部分を褒められたら嫌だな。と。「髪の毛がきれいね」とか。で、夏川さんえくぼができるから、えくぼを褒めるってシーンを台本に描いたのですよ。で朝、差し込みで持って行って。そしたら「承知しないわよ!」もう一回やったら絶交!(笑い)(と夏川さんに言われました。) それで打ち止めしましたけど。。
奈良:作品の中に出てくる、心に突き刺さる言葉は、そのノートから生まれたものもいくつかあるのでしょうか?
是枝:ありますよ。ありますよ。 大事ですね。

■「誰も知らない」はあの階段が最初です。

奈良:是枝監督の作品の中で、何回も同じ道、同じ階段、同じ家の中など印象的に使われているように感じるのですが、意図されているのですか?
是枝:同じ階段でも日の角度が変わったり、相手が変わったり、歩いている気持ちが変わったり、変容させながら反復していくことでリズムが生まれていくと思っているので。それは音楽と一緒だと思いますよ。
奈良:なるほど。そのポイントとなる誰も知らないで言うと、真ん中に2本手すりのある階段は・・
是枝:あれは、ロケハンであの階段を見つけて、あの階段を上り下りする兄弟を撮ろうというところから、あの階段のそばで、アパートを見つけて。。 あの階段が最初です。
奈良:やはり作品ごとに、この作品は“ここ”というのがあるのですね
是枝:ありますね。

■ただ単純に好きにしてくださいって言って、面白いものは生まれないと思うんですよ。

奈良:音というのは是枝監督の中で、どのようなこだわりがあるのでしょうか?ほとんど挿入曲がないじゃないですか?
是枝:なるべく使いたくないんだよね。音楽。
奈良:それはなぜなのですか?
是枝:なぜ。。。 うるさくないですか?(笑い)
奈良:是枝監督の作品を見ると、日常の音、画面から出てくる音がすごく耳に残って、逆に目が離せなくなる。
是枝:音楽はあまり使いたくないんですけど、音楽使わないで成立させるには、その日常的ないろんな音、足音を含めた、台所のいろんな音、庭から聞こえてくる音、家の中で言えば、時間によって変わるし、そういうのを立体的に作っていかないと、耳がさみしくなっちゃう。音楽を使わないのであるならば、そこは執拗にやっています。非常に細かく作ったつもりです。たとえば壁を隔てた、隣の部屋から聞こえてくるレコードの音とか、、 どうやったら、壁を隔てたように聞こえるか、それも、そこまでにお客さんに部屋の間取りをわかってもらっておいて、隣の部屋のレコードプレイヤーが見えていないんだけど、今壁のこっち側でレコードが鳴っているんだなと。見ている人にわかるような音の響かせ方を考えていかないと、スクリーンで描いたものの外側を意識できなくなるから、そこをなるべく丁寧にやって、そこで音楽を削っていく。もちろん映画の中のオリジナルの音もありますけれど。庭でスイカ割をやっている時の、子供のはしゃぐ声とか、棒がスイカにあたったときの音とか、大体みんなイメージがあるじゃないですか。そうすれば、途中まで見せておけば、最後まで見せなくても今どうなっているな、今目隠ししたんだなとか。そういうのは途中で切ってもみんなの中で広がっていくでしょ。そこはその部分に任せておいて、というような省略の仕方をしつつ、その先にどういう別のものを重ねていくようなってことも笑 
奈良:すごいですね
是枝:すごく細かい仕事ですよね
奈良:細かい仕事ですけど、この話をもう一つすると、「歩いても 歩いても」で言えば、台所と居間は、ああなっている人はどれくらいいるかわからないけど、東宝の屋内の中に組んだセットなんですよ。表の病院は吉祥寺で撮っていて、待合室も吉祥寺なんですけど、廊下でつないで、居間と台所は、セットなんですよ。そうすると居間の奥に広がっている庭は、セットの中なんです。そうすると、すごくうまくできているんですが、庭で遊んでいる子供の声は、セットの室内に反響して、響きが広がっていかないんです。戻ってきちゃうから、すごく室内っぽいんですよ。なので、そこだけ全部アフレコにして、表に出て、その庭でやっている遊びを、表で音だけ取り直ししました。それで音だけ散っていく音にして、あそこにはめ込んでいるんですよ。そうすると、それだけで、全然セットだなって思わないんですよ。
奈良:全然思いませんでした。
是枝:音ってやっぱり大きくて、その空間が半分から開いているのか、閉じているのかというのは耳がちゃんと聞き分けるから、そこを厳密にやっていかないといけないなと思っているんだけど、大体やんないの。それは遠くの音は遠くで撮らずに、近くで撮ったものを小さくして、使うって方が安心なので、そういう発想に基づいて音を撮る方たちが多いんだけど、僕がずっと一緒にやっている方たちは、理解いただいているので、ちゃんと外に行ってくれます。
奈良:是枝さん組は大変ですね。
是枝:壁隔てた音は、壁隔てたところにもマイクおいてくれるから。それをもちろんミックスするんですけど。人間の耳よりは、マイクの方が性能が悪いから、本当に壁を隔てた音だと、それは壁を隔てた音に聞こえなかったりするので、そこにまた音を足していかなきゃいけないという、微妙なバランスなんだけど、壁を隔てた音を撮れるのかっていうのがすごく。。 こんな細かい話面白いですか?
奈良;なかなか聞けないですからね
是枝:もっとね、もう一つ言うとね。また「歩いても 歩いても」の話ばっかりしてあれなんだけど、感動したのが、照明さんが時間設定とシーンの流れをすごく僕にしつこく聞いてきて、これは何時ですか?このシーンの流れはこうですね?というように流れを確認したうえで。(それはどういうことかというと、)撮影所の中のシーンで時間経過とともに、人工的な太陽の位置を変えていっているのね。ロケセットで病院の診察室、待合室撮ったときも照明足しているんですよ。自然光で撮った方がきれいなんだけど、どうしてもセットの照明が人工的になるから、ロケセットの照明に、人工的な光を足しておいて、そこでなじませるんだって。僕としては、自然光できれいなんで、ノーライトで行きましょう!って言ってしまうタイプなんですけど、全体のトーンのバランス考えて、自然光に人工照明足すって発想は自分の中では、結構新鮮だったんですよね。そこで、太陽の位置を考えながらすごくマッチングに工夫をしていただいているので全く違和感がないんですよ。その廊下を歩いて行って光が変わらないっていうんですかね。玄関入って、待合室通って、廊下で、居間に入ったときの太陽の位置というのがちゃんと同じところにあるというのはすごいなと思って。
奈良:プロですね。
是枝:プロだな。
奈良:ストーリーの裏側にあるすごく細かいところを調べられて、こだわるんですけど、現場はキャストに預けたり、その場の空気に合わせたり、すごく柔軟な部分もあって、非常に不思議に作り方ですね。
是枝:そうですかね。でも、ただ単純に好きにしてくださいって言って、面白いものは生まれないと思うんですよ。
奈良:ありがとうございます。

是枝裕和監督 #4国内外の違いと普遍性 日本の映画祭の在り方に続く
▶︎#4 国内外の違いと普遍性 日本の映画祭の在り方 /配信中  
出典元:SSFF channel :https://www.youtube.com/watch?v=SgzsPkl4lIc

■映画監督:是枝 裕和
1962年、東京生まれ。87年に早稲田大学第一文学部文芸学科卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出。14年に独立し、制作者集団「分福」を立ち上げる。カンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭など国内外の高い評価を得ている。新作『海街diary』が2015年初夏公開予定。

是枝裕和 監督「カタチを決めない“カタチ”」絶賛配信中!
▶︎#1 撮影現場が生み出す自然体の演技 /配信中
▶︎#2 ドキュメンタリー制作時代から学ぶ完成への輪郭 /配信中
▶︎#3 日常を立体的に演出する声と音 そしてロケーション/配信中
▶︎#4 国内外の違いと普遍性 日本の映画祭の在り方 /配信中   
▶︎#5 是枝監督とショートフィルム 映画を劇場で観るということ/配信中  
▶︎#6 参加クリエイターから是枝監督に質問/配信中 

クリエイターズパーティーとは?
ブリリア ショートショート シアターは、未来の映像作家への登竜門でもある国際短編映画際ショートショート フィルムフェスティバル & アジアと連動しており、クリエイター支援をコンセプトのひとつに掲げています。このイベントでは毎回、様々なジャンルからゲストスピーカーをお招きし、セミナー後にラウンジにて交流会を行っています。このイベントでの出会いが、製作に向けたコネクション作りなど、クリエイター支援はもとより、映像業界全体の活性化に繋がればという想いのもと、このような取り組みを行っています。


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