アイルランドで平凡な日々を暮らす男性教師が、同性愛者であることを告白する「空の移り変わり/ Change in the Weather」。 去年、カトリックの信者が多いアイルランドで、国民投票によって同性婚が合法化されたことは、世界で大きなニュースとなりました。この話は、その出来事とMuiris Crowley監督の親戚が実際にカミングアウトをしたことから生まれたそうです。
もともと演者であるCrowleyさんが、初めて監督に挑んだ本作品。タイトルの意味を会場に聞かれると、「世の中には、天気のように自分では変えられないものがある。主人公は自分の中に変化を見つけた。そうした時に、人は受け入れるしかないということを伝えたかった」と話してくださいました。
また、ショートを作り続けていく上で必要なものはという質問に関しては、「自分のストーリーを持っているか」どうかであると答えてくださいました。そうすれば、共感してサポートをしてくれる人が現れ、完成すれば映画祭などにも参加することができ、次の制作へと繋がっていく・・。実際、今回の作品は、監督の実家を使い、両親役は実のご両親に演じてもらい、カメラマン兼音声は友人にしてもらい、と周りの協力を得て完成したそうです。
写真左側から、「セイド」のElnura Osmonalieva監督、「マスト・カランダー」のDivij Roopchand監督、「Five Percent Man」の田中雄之監督、「海酒」の中臺考樹プロデューサーと小宮誠プロデューサー。
キルギスの少女が望まない結婚を強いられ葛藤する姿を描いたelnura監督は、「実際は、連れ去られて結婚させられる女の子もいるというキルギスの実情を伝えたかった」と作品に込めた思いを話してくださいました。4人の子どもがいる監督にとって、子どもの幸せというのは深く身近なテーマなのだろうと感じました。
インドの思春期の男の子とお母さんの関係を描いたストーリーを描いたRoopchand監督には、「なぜ男の子の髪は長いのですか?」という質問が。インドの宗教のひとつ、シーク教では、男性も女性も生涯髪を切ってはいけないという信仰があり、長い髪を束ねるターバンを巻く習性があること。またシーク教徒はもともと多くが戦闘員であったという歴史も教えてくださいました。
映画人の苦難と葛藤を描いた作品について、「業界に詳しくない人は驚く内容かもしれないけれど、映画界のあるある話を描いてみてみたかった」と制作するきっかけに触れる田中監督。映画の制作に妥協はしたくない映画人の思いと、ビジネスの視点。お金に関わらずいい作品を作りたいというご自身の信念とともに、現実的な実情についても赤裸々に語ってくださいました。
題名にちなんで爽やかなブルーハットで登場してくださった「海酒」の中臺プロデューサー(写真左)と小宮プロデューサー。 お笑い芸人・芥川賞作家の又吉直樹さん主演の作品は、なんとこの映画祭がきっかけとのこと!去年、お二人が映画祭を観た時に、「来年ここで上映できる作品が作りたいね」と話して制作されたそうです。そして、実現されたお二人。夢は叶えるもの!
オードリー・ヘップバーンに魅了される「ティファニーで朝食を」…ではなく、「ティファニーと朝食を」のAndres Molano Moncada監督。 不器用な男性が、愛する恋人に朝食を準備するシーンから始まり、なんとも愛らしい作品かと思いきや、作品のテーマは「不可能な恋」。これは、監督が先生をしている映像学校の生徒から得たアイデアだそうです。なぜ、不可能な恋なのか。救いはあるのか。難しい恋だけど、なぜか微笑ましい作品。ぜひ観ていただきたいです!
恋人と登山する聴覚障害の女性が山で遭難するストーリーを描いた「ブルーミスト」のPauline Findlay監督。ミステリアスな作品と違って、とてもエネルギッシュ! 謎めいた終わり方に対しては、「観客のみなさんが考えるスペースをたくさん与えて、考えてほしかった」と、結末を曖昧にした理由を語りました。
美しい映像と悲しい別れに涙が止まらない「Where We Begin」の宮崎光代監督。 監督が16年前にお祖母さまを亡くし、スピリチュアルな経験をしたことから、いつか愛する人との別れという普遍的なテーマを描きたかったとのこと。そのストーリー、そして映像美にぐっと引き込まれます。
また、会場からは面白い質問が! 「なぜ、ショートフィルムを撮ろうと思ったのですか?」
Moncada監督は、「長編をつくるより、簡単で低予算。アイデアを具現化するのに一番いい方法だから」。
Findlay監督は、「アイデアに共感してくれる人がいれば、撮影日数も少ないので協力を得やすい。そして、長編への大切なステップになる」。実際、今回の作品は聴覚に障害がある人を描く時のサウンドデザインなどを試す絶好の場となったそうで、今は長編に向けて作業を進めているとのことです!
3人の女性の嘘。好きな自分になっている嘘。嘘とは…? 自分も気づかない間についているかもしれない嘘について考えさせられる「嘘をついて」。三ツ橋勇二監督と脚本を手がけた米内山陽子さんをはじめ、出演された田中さん、中村さん、高橋さん、信國さんがご登壇!とても華やかなステージとなりました。米内山さんの「脚本を倒す」思いで制作に挑んだという三ツ橋監督。米内山さんからの一言は、「倒されました」!
未来、コードで繋がれた少女とロボットを描く「キープ・ゴーイング」のGeom Kim監督。卒業制作の作品で、低予算でSF映画を作らなければいけなかったので、ふたりをコードで繋ぐことでSF感を出したということですが、結局予算を越してしまったとのこと!それも仕方がないと思える、迫力あふれる作品となっています。
Kim監督には、三ツ橋監督から質問もありました。 最後に口から血が噴き出すシーンに触れ、「韓国ではそうした描写のある作品が多いように見られますが、なぜですか?」と。Kim監督は、「韓国人はエンターテインメント性の高い作品が好きな傾向があります」に加え、「辛いものが好きなのと同じことだと思ってください」と!舞台からも会場からも笑いがおきていました。
]]>フリーの映画プロデューサーの奮闘を、 ドキュメンタリー風フィクション“モキュメンタリー”で描いた『FIVE PERCENT MAN』。斬新なこの企画の始まりは、田中雄之監督が、アメリカ人の友人にアイデアを話したことがきっかけとのこと。ひょうたんから駒…ならぬ、雑談からショートフィルムですね。
厳格な宗教の戒律を持つ家に生まれた、インド人少年の青春を描いた『マスト・カランダー』。「主人公の子役は、オーディションで200人の中から即決しました」とDivij Roopchand監督。ホントいい顔してるんですよね、あの少年。劇中のヒップホップの使い方が絶妙です!
そのバーは、世界中の海水から生まれたお酒を出す……という不思議な世界観を持つ特別上映作品『海酒』(主演は昨年芥川賞を受賞した又吉直樹さん!)。中臺孝樹プロデューサーは、「観る人にイメージを広げてほしいから、敢えてさまざまな“違和感”を残しました」と、本日撮影でお越しいただけなかった監督のこだわりを教えてくれました。
中年男のちょっと変わった“純愛”を描いた『ティファニーと朝食を』。母国コロンビアで映画の教師をしているAndres Molano Moncada監督は、授業の中で生徒さんから出た“禁じられた恋”のアイデアにインスピレーションを得て、シナリオを書き上げたと言います。さすが先生、大人のひねり、バッチリ効いてましたヨ。
『ブルーミスト』は、森の中でのデートを楽しむ若いカップルが陥る悲劇を、張り詰めた緊張感で描いたオーストラリアの作品。謎めいたラストに、Pauline Findlay監督と観客のQ&Aは大盛り上がり!耳が不自由な方の世界をリアルに表現したというサウンドデザインは、入念な取材を重ねながらつくり上げていったそうです。
死を目前にした老女ソフィアの人生を、ダンスと音楽だけでダイナミックに表現した『WHERE WE BEGIN』。世界中の誰もに伝わる普遍的な作品に仕上がっていますが、実は、このアイデアの源は監督自身が経験した大好きな祖母との別れにあったそう。個人の体験が、大きな物語に。Mitsuyo Miyazaki監督の想像力に、脱帽デス!
『ソシオパス』は、少女とアンドロイドとの出会いを通じて、心なき現代社会を警鐘する衝撃作。「アンドロイドは、グリーンマスクを被った役者さんを撮影し、その後CGで加工していった」とA.T.監督。その作業には、4、5社に手分けしてもらっても2〜3ヵ月ほどかかるほど大変だったと言います。
中国とウイグル自治区の民族・宗教的軋轢が、若い娘の結婚問題を通じて浮かび上がる『アナエル』。深い社会洞察を感じさせる作風に、「ウイグルの若い人は、(主人公のように)北京などの大都会に出たがっているのか」など、観客席からは“中国の今”に関する質問が相次ぎました。全編に流れる美しい風景は、KunRu Song監督がひとりでロケハンして探し当てたそう。
催眠術を使って好きな男子をゲットする。そんな高校生の淡い計画が巻き起こす青春ストーリー『夕暮れの催眠教室』。ゲストには、女優の青木珠菜さん、長谷川ニイナさんが登場。親友の役柄が自然だったお二人ですが、それもそのはず、実は古くからの友人同士。ちなみに二人とも、催眠術にかかったことはないそうですヨ。
ロンドンの不良少女と、アフガニスタン移民の優等生少女。何もかも真逆の二人の関係が、仲が深まるほどに思いがけぬ方向に変化していく『バルコニー』。Toby Fell-Holden監督は、「悪い環境で生きている人間は、出会う人にも悪い影響を与えて染め上げてしまう。たとえ相手がどんなにいい人間であっても」という人間観で、悪が持つ恐ろしい力を描きたかったと言います。シナリオを読んでもらった知人には、「重く暗すぎる」と言われたそうですが、それでも現実のリアリアティにこだわって今の作風を貫いたそうです。
本日のプログラムはこれにて終了。最後の最後まで、監督と観客が熱く意見を交わし合う、濃密なアフタートークとなりました。明日もラフォーレミュージアム原宿には多数のゲストが登場予定!お楽しみに!
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