Awards
受賞情報
SSFF & ASIA 2024 各賞の受賞結果
The award results for SSFF & ASIA 2024
ジョージ・ルーカス アワード(グランプリ)
せん
森崎 ウィン
ある田舎の一軒家というワンシチュエーションで繰り広げられる物語ながらその背景から聞こえてくるメッセージ、音楽と役者の見事なパフォーマンス。ショートフィルムらしい圧倒的な構成力で無駄がなく、大変力強い作品。 ミュージカルアクターである監督ならではの演出が光っており、グランプリにふさわしい作品であった。
ライブアクション部門
インターナショナル 優秀賞
ヤマアラシのジレンマ
マテウス・リビンスキー
二人の人間が出会って、化学反応が起こって変わっていく様子が初めから最後までストーリーの流れがよくまとまっていて、キャラクターディベロップメント、ストーリーディベロップメント、演技、全てにおいて長けていた。全編手話で台詞が全くない中で、映像演出のメッセージが素晴らしく、見たことのない世界を体験させてくれる例外的に素晴らしい作品。
審査員:永作博美、山崎エマ、ティム・レッドフォード
アジアインターナショナル 優秀賞/東京都知事賞
いつの日か
プラディーダ・ブリファ・ラハユ
視覚障害のある役者の演技が素晴らしく、友達同士の中で一人が成功を収め、一人が取り残されるという誰もが経験する人生の葛藤を見事に演じ切っていた。障害を中心にするのではなく、友情の物語として誰もが共感でき、夢と希望をもらえる素晴らしい作品。
審査員:シャロン・バダル、藤岡弘、、本木克英
– シャロン・バダル
まずライブアクション部門アジアインターナショナルの作品の多様性のある力強い作品のラインナップに衝撃を受けました。『いつの日か』は障害に関する物語ではなく、夢と友情がテーマであり、特殊学校の設定や視覚障害のある俳優の起用は印象的でした。
また、活気にあふれるストーリーテリング、視覚的に独創性溢れる構成、爽やかな色彩と登場人物たちを評価し、『ハートを編む』へ審査員特別賞を贈呈します。
– 藤岡弘、
伝統的、民族性、時代性、国民性、それぞれの抱えている問題意識が描かれていて、考えさせられ、様々な人間模様など想像力が膨らんで楽しめた。受賞作の『いつの日か』は、実際に目の見えない方が演じていることに感動した。リアルさが伝わってきて、こうやって障害のある方が参加して、夢や目標に挑戦しようとする姿に感じるものがあった。演技が素晴らしかった。
『少女の闘い』は、伝統的なもの、父と娘の関係も良く描かれていて、そこで夢を追う少女の必死さが伝わってきた。ショートフィルムとして、主人公のその後を想像させる良さがあり、希望を感じた。
– 本木克英
審査対象となった25作品すべてから、「観られる」ことを意識した高い完成度と、客観性のあるメッセージを感じた。フィリピンや東南アジアの作品には、文化的興味がそそられ、中国や、中央アジア・キルギスの作品からは、ドラマに内包された社会性が痛烈に伝わってきた。受賞作の『いつの日か』は、障害に同情させるのではなく、挑戦がうまく描かれていた。
『父と娘が見た夢』 は、取り返しのつかない悲劇を、父の妄想の中で芸術的に昇華させる演出が素晴らしかった。マングローブの森の美しさが、主人公の哀しみを痛切に際立たせて、強く心に残った。
ジャパン 優秀賞/東京都知事賞
せん
森崎 ウィン
ラジオから聞こえてくる世界情勢と変わらない日常生活の中に、歳を取ることや孤独といったテーマがあり、さりげない中に深いメッセージが隠されている。全体的に自己の周囲を見つめて深堀りしていく似通ったテーマが多い中で、オリジナリティがあり、新鮮で意外性のある作品だった。
審査員:シャロン・バダル、藤岡弘、、本木克英
– シャロン・バダル
『せん』は繰り返しの歌のメローディーで飽きしてしまうと予測していたのですが、全く予想外でした。それは老化と変化についての奇妙な旅へと私を連れ出してくれました。私は通常ミュージカル仕立ての短編は好きではありませんが、この作品ではミュージカルが詩的な表現として使われ、一日が始まり、やがて終わり、「何も変わらない」という丸く収まる物語の展開が素晴らしく、高く評価しました。
また、悲嘆とその後の痛切な描写、音と静寂の効果的な使用、文化的に本格的なロケーション撮影、そして感動的な結末に対して、『ゆ』に審査員特別賞を贈ります。
– 藤岡弘、
若者や子供たち、一般の人に分かりやすく、刺激を与える作品かどうかを大切に審査しました。
『せん』は、日常生活の中で流れていく時間の中で、一つ一つメッセージがあり、色んなことを想像し、考えさせてくれる作品です。
『竹とタケノコ』は、「日本伝統の花火」と「生涯の最後に花を咲かせると言われる竹」を主人公の生き様に投影し、短いドラマの中に、親子の絆など、華やかな花火に込められた深いメッセージを感じ、最後にグッとくるものがありました。未来を作る子供たちに希望を与える映画だったと思います。
– 本木克英
プロダクション性はどの作品も高く、プロフェッショナルなキャストとスタッフの力を存分に感じた。一線で活躍する俳優の方々が監督に挑戦している例が増えて、どれも新鮮に楽しめた。
受賞作の『せん』は、独自性、娯楽性、社会性、すべての面で優れた短編である。
『撮影/鏑木真一』は、映画に込めたメッセージを、「面白く」伝えようとする監督の心意気に拍手を送りたい。主人公の沈黙の理由が、記事以外にも補強されていれば、グローバルな力を持つ作品になったと思う。
その他部門・公募プロジェクト
ノンフィクション部門 優秀賞
ナイジェリアのバレエダンサー
ジェイコブ・クルプニク
テーマ、メッセージ、創造性、カリスマ性、サウンド、尺、全ての分野においてショートフィルムとしてずば抜けて優れており、人物を描くドキュメンタリーが多い中で、他のどの作品よりもオリジナリティが光る作品であった。残酷だけれども美しく力強いメッセージと若者のパッションがいつまでも心に残る作品。
審査員:永作博美、山崎エマ、ティム・レッドフォード
– 永作博美
受賞作の『ナイジェリアのバレエダンサー』は、色鮮やかで、演出の効果も素晴らしく、純粋な思いがストレートに伝わってくる映画だった。
『アルフレッド』は、純粋の真骨頂だと思った。大自然の映像は威厳という気高さとなり、撮影監督の心の声のなのか?その歓喜、その興奮に同感する。在るべき姿を喜び、そして誇りを持って暮らしている、という主人公の訴えに疑う余地はなかった。自然と共に生きる事に畏怖ではなく尊敬と愛を感じる。特別なことではないのかもしれないが、純粋に美しかった。受け入れるという受動は逞しく能動的であった。そして真っ白い雪景色は、主人公の心の中と一致した。
– 山崎エマ
『ナイジェリアのバレエダンサー』は心揺さぶるストーリーを見事に捉えつつ、表現方法も芸術的リスクを取った、スリリングな作品でした。そして、Jessica Bishopp監督の『パフィン』についてもコメントしたいです。詩的に撮影され、見事な編集が施された本作は、この小さな島に住み人生の岐路に立つ少女たちの視点と、転換的な瞬間に直面しているパフリングたちの状況が重なりました。作品の表現方法が、問われているテーマと見事にマッチしていて、魔法のような魅力を感じました。短編ドキュメンタリーが達成できる限界に挑戦した、Bishopp監督とチームの素晴らしい作品に祝福を送りたいです。
– ティム・レッドフォード
『ナイジェリアのバレエダンサー』には、強いメッセージ性を感じます。圧倒的に素晴らしく、類まれな作品でした。
また、『デヴィッド・アゲイン』に審査員特別賞を贈呈したいと思います。苦難を乗り越えた男の、この痛烈な作品に心を奪われました。この感動的なドキュメンタリーは、登場人物の感情に可能な限り寄り添い、誠実に、驚くべき技巧と巧みな演出で描かれ、友情の美しさを描いています。
アニメーション部門 優秀賞
プールのカニ
アレクサンドラ・ミョッテ & ジャン=セバスチャン・アメル
少年の持つ想像の双眼鏡、空間コンピューティング的表現、カラフルできめ細やかなタッチが素晴らしく、現代的で非常に優れた作品。狭い世界を描いていそうで深いテーマがあり、人間の様子がリアルによく描かれていた。
審査員:川田十夢、シシヤマザキ、杉山知之
– 川田十夢
短編アニメーション映画は、普段から好きでよく観ているのですが、今回の候補作品は、秀作揃いでしっかり演出と紐づいている作品群が印象的でした。ゲームエンジンを使って制作しているであろう作品もあったし、そのままゲーム化して欲しいものもありました。受賞作の『プールのカニ』は、想像力の根拠がきちんと描かれていて、生と死と青春とノスタルジアと夢がすべて入っていました。
『宿命』は、どのシーンを切り取ってもグラフィックデザインとして優れていて、ゲーム化されたら真っ先にやってみたいと思った作品です。
– シシヤマザキ
今回のノミネート作品は、キャラクターの感情表現がキーとなるエモーショナルな作品が多かったが、単純に人形劇的にキャラクターを動かすことよりもむしろ、映像空間自体を「装置」ととらえて動かす意識の方が重要であるように感じた。受賞作の『プールのカニ』は、重たく直接的な問題を扱っていていつつも、童心への誘導が優れているので、体験として響いてくる作品。
『心の花園』は、絵画、美術作品にまつわる恐れや不安を、要素の対比によって表現し、主人公の心情が花園として描写されていることや、ラブリーな絵柄がむしろ緊迫感を煽っているところが素晴らしい。
– 杉山知之
最終選考に残った作品からは、二つのテーマが感じられた。ひとつは「死」、もうひとつは「日常」だ。受賞作の『プールのカニ』は、乳がんで母を失った姉と弟の物語だとだんだん分かってくる構成が素晴らしい。多くの伏線が張られており、それが回収されていく。何度も味わいたい作品である。
『ある完璧な一日 七つの場面ほか』は、エドワード・ホッパーの絵画の世界観を映像化したスタイリッシュなレンダリングが美しい。ニワトリのおもちゃがキーとなって、大切な人の営みを感じる作品。
– 永作博美
受賞作の『ヤマアラシのジレンマ』は、静かで心地の良い作品。主演の2人が素晴らしかった。
『複雑な状況』は、本来ならば難しいであろう1室のみで構成されていて、しかも短編でこのように心情豊かに表現できることに驚いた。誰と深い話をする訳でもなく状況はどんどん進んで行くのだが、何をどう考え、どうして?何の為に、などの詳細が伝わって来るのだ。流れの緩急を捉えて、積極的な方法で伝えるという演出であったと思う。主人公である俳優は落ち着いた芝居にもナチュラルな説得力があり、こちらを心地よく前向きにさせる。全ての波長がうまく重なっていた。
– 山崎エマ
『ヤマアラシのジレンマ』では個人的にほぼ知識がなかった世界に吸い込まれ、試聴後は何日も感情の波に浸っていました。そして、Ibrahim Handal監督の『子どもにまつわる短編映画』についてもコメントしたいです。全体の印象、演出、メッセージが完璧に一致したこの予測不可能な魅力的な映画で、Handal監督は映画作りの達人ぶりを発揮しています。物語の世界と子供たちの想像力と達成に没頭する一方で、この地域で続く大量虐殺を考えると、この映画のスタッフや俳優たちの実際の生活は今どうなっているのだろうという思いが離れませんでした。本作品は多くの人に見てもらうべきで、なぜ映画制作が重要なのかを思い出させてくれました。
– ティム・レッドフォード
『ヤマアラシのジレンマ』には登場人物の人間関係に美しいケミストリーがありました。
また、『ウォーター戦争』の卓越したストーリーテリング、革新的な演出、そして魅力的なパフォーマンスを評価したいです。この映画は、日常的な出来事をユーモアや緊張感、そして予想外な展開で魅惑的な作品へと劇的に変貌させていきます。ダイナミックなテンポとビジュアル・コメディを駆使することにより、ただ楽しませるだけでなく、水不足という世界的、重要課題にも取り組んでいる作品です。