開催レポート

令和6年度日本博 2.0 事業(委託型)
世界の映画祭リーダーが集結する映像未来会議

~観光促進の役割から、最新技術のショーケースとしての映画祭について~
開催レポート

2024年11月9日(土)、令和6年度日本博 2.0 事業(委託型)「世界の映画祭リーダーが集結する映像の未来会議」を静岡県島田市にて実施しました。

インドネシア、ブラジル、ニュージーランド、フィンランド、そして山形県(日本)の映画祭ディレクターら5人の専門家がパネリストを務め、映画祭が今日の文化、技術革新、世界的な観光振興において果たす重要な役割について議論されたこの会議の模様をお届けします。

先ずは各国のパネリストより、それぞれの映画祭について、短いプレゼンテーションを頂きました。

ミニキノ フィルム ウィーク(バリ国際短編映画祭)

ミニキノ フィルム ウィークは2002年にインドネシア・バリで設立されました。
毎月、上映会とディスカッションが開催されており、映画祭はコミュニティ上映に焦点を当て、人々が短編映画を大画面で一緒に観る機会を提供しています。こうしたイベントは、映画文化を存続させる役割を果たしています。
インドネシア文化省の支援を受け、現在ではバリの持続可能な観光コミュニティの一部となっています。地元のレストランやホテルと協力し、観客向けにバウチャーを発行する取り組みも行っています。さらに、リサイクルされたTシャツを利用して映画祭用のバッグを製作するエコシステムも構築しています。
また、手話や音声解説付きの上映を行い、障がいのある人々が映画を十分に楽しめる共有スペースを提供しています。

リオデジャネイロ国際短編映画祭

リオデジャネイロ国際短編映画祭は1992年に短編映画の小規模なショーケースとして始まりました。
1994年にはブラジルの短編映画に焦点を当て、1998年には一般公募を開始しました。
その3年後には、アカデミー賞公認の映画祭となりました。
市政府の支援を受け、リオデジャネイロの文化的な魅力を活かして観光振興に貢献しています。この映画祭は、都市ブランドの価値を高め、ますます多くの観光客を惹きつけています。映画祭の資金は、作品エントリー料やクラウドファンディングによる支援でまかなわれています。

ショウ ミー ショーツ映画祭

ショウ ミー ショーツ映画祭は2006年に設立されました。
アカデミー賞とBAFTA(英国アカデミー賞)の公認を受けており、アメリカの映画雑誌Movie Makerによって世界のトップ20短編映画祭のひとつに選ばれました。
この映画祭は短編映画を国内の40以上の会場で上映しており、学校、図書館、バーなどでも上映が行われます。
国際的な来場者はそれほど多くありませんが、観光客に向けたプロモーションに力を入れています。映画祭では観光客向けのイベントを企画し、ニュージーランドへの誘致を促進しています。もともとは国内向けの映画祭でしたが、現在は中央政府や地方自治体など、さまざまな組織と連携しています。

タンペレ短編映画祭

タンペレ短編映画祭は、フィンランドで2番目に大きな都市タンペレ市の支援を受けています。
この街には30〜40年間、繊維工場がありましたが、多くの地域と同様に産業が移転し、新たな発展が求められました。そのため、文化活動に積極的に取り組むようになりました。映画祭の期間中、市庁舎で大規模なレセプションが開かれるほか、サウナのイベント、支援も行われています。また、観光局とも連携し、映画祭を通じて都市を魅力的な場所にすることを目指しています。
最終的には、フィンランドで最も住みやすい街としての評価を得ることを目的としています。

山形国際ドキュメンタリー映画祭

山形国際ドキュメンタリー映画祭は、アジアのドキュメンタリー作品の登竜門的な存在です。調査報道だけでなく、幅広いジャンルの創造的なドキュメンタリー作品が上映されます。この映画祭の目的は、地域コミュニティの人々が定期的に集まり、映画を観る機会を提供することです。映画祭が始まった背景のひとつとして、山形市民は映画好きであり、一人当たりの映画館の数が非常に多いことが挙げられます。1989年に設立されたこの映画祭は、現在では市政府から独立したNPOとして運営されています。しかし、山形市は依然として最大のスポンサーであり、予算の約80%を提供しています。また、文化庁の関連機関である国立映画アーカイブ、ユニフランス(フランス映画振興機関)、ドイツ文化研究所、台湾の経済貿易文化省なども協力団体となっています。

5名のパネリストによるクロストーク(パネルディスカッション)

「映画祭の持続可能な取り組み」について

ショウ ミー ショーツのマーク・プレブル氏は、彼らの映画祭の持続可能性の課題として、「他の会場へ移動すること」を挙げました。なぜなら、この映画祭は2つの主要な島(北島とオークランド)に複数の会場を持っているからです。この問題を解決するために、最近では南島に専任スタッフを配置し、すべてのイベントを管理・運営するようにしました。これにより、人材の確保ができるだけでなく、移動費の削減にもつながりました。また、「単純な行動として、勤務時間を50%に減らすだけでも通勤の移動が減り、より持続可能な運営が可能になる」と述べました。

タンペレ映画祭のユッカ=ペッカ・ラークソ氏は冗談交じりに、「持続可能性を考えるなら、一番いいのは映画祭をやめることだ」と言いました。なぜなら、映画祭は人々を集め、移動を伴うものだからです。特に、遠方にいる参加者にとっては大きな移動が必要になります。しかし、現代の技術を活用することで、紙のカタログやチケットをデジタル化し、映画の輸送コストを削減することができます。

リオデジャネイロ国際短編映画祭のアイルトン・フランコ・ジュニア氏は、映画祭運営の現実的な視点を語りました。観客の中には、いまだに紙のカタログを好む人々が一定数存在します。持続可能性は単なる環境問題だけではなく、「映画祭をどのように存続させるか」を考えることも重要だと述べました。

ミニキノ フィルム ウィークのフランシスカ・プリハディ氏は、映画祭の持続可能な活動として、地元の業者と協力する方法を模索していることを紹介しました。また、Tシャツをリサイクルして映画祭用のバッグを作ることで、「持続可能な取り組みに何ができるか」を人々に伝える活動をしています。

山形国際ドキュメンタリー映画祭の藤岡朝子氏も、「多くの映画祭はカンヌやベルリン国際映画祭のような規模ではない」と指摘しました。そのため、映画祭は観客との距離を縮めることが大切です。例えば、ミニキノ フィルム ウィークのTシャツリサイクルの取り組みは、一般の人々に持続可能性のメッセージを伝える手段となっています。また、資金を確保するためにも、このような持続可能性を意識した計画は必要です。このような取り組みを通じて、誰もが環境問題への意識を持ち始めるのです、とコメントされました。また彼らは、「持続可能な映画祭運営の一環として、映画祭のプログラムや映画製作自体を通じて、持続可能性のメッセージを伝えることができる」と話しました。

「映画祭のデジタルトランスフォーメーション(DX)」について

ここでは、デジタルによる映画提出、QRコードを使った観客投票、電子チケット、ポスターやカタログの電子化など、多くの変革が紹介されました。

一方で、タンペレ短編映画祭のユッカ=ペッカ・ラークソ氏は、テクノロジー管理の必要性について言及しました。「各システムは異なる企業によって運営されており、それぞれ異なる方法で更新されている」と述べています。
また、「新しい技術は便利だが、誰もが使えるわけでも、使いたがるわけでもない」と指摘しました。「フィンランドには、あえてスマートフォンを使わないと決めている若者もいる」とのことです。

山形国際ドキュメンタリー映画祭の藤岡朝子氏は、映画のライブラリーを紹介しました。デジタル化により、映画のレンタルが簡単になったと説明しています。

ミニキノ フィルム ウィークのフランシスカ・プリハディ氏は、「より柔軟で観客にとって有益な形にする方法を考えなければならない」と述べました。

「Web3、メタバース、VR」について

5、6年前、タンペレ映画祭では、欧州連合(EU)の資金提供を受けたVRプロジェクトがありました。このプロジェクトでは、「VR短編映画において、どのような芸術的発展があるのか」を探りましたが、大きな影響を与えることはできませんでした。

ユッカ=ペッカ・ラークソ氏は、「私はよくこう言っています。スクリーンと音という二次元の映画を管理するのに100年以上かかりました。しかし、多くの人はまだそれさえも完全に扱いきれていません。VRコンテンツを制作する準備ができている人は少ないのです」と述べました。「360度映画を見ることができるのは素晴らしいことですが、興味深いものもある一方で、多くはまだ発展途上だと思います」と語っています。

アイルトン・フランコ・ジュニア氏は、「大切なのは、『理想の映画祭』を考え続けること、そして人々に映画体験を届けることです」と述べました。「最近では『映画祭なんてもう必要ない。家で映画を観られるから』と言う人もいます。しかし、映画祭こそが、共に映画を体験する場なのです」。

藤岡朝子氏も、「VRは、現在まさに生み出されている新しい創作手法です。私自身、とても興味があります」と語りました。しかし、「私たちの映画祭では、VR映画を上映するための専用ルームや機材を準備するのが難しい」という課題も指摘しました。

一方、ミニキノ フィルム ウィークのフランシスカ・プリハディ氏は、「私たちは実際にVR映画を上映しています。VRは物語を語る一つの手法だと思います」と述べました。「もちろん、すべてのVR作品が良いわけではありませんが、中には素晴らしいものもあります。観客は映画祭でその体験を楽しんでいます」。

「新技術/生成AI」について

マーク・プレブル氏は、「特定の技術に対して強い立場を取ることはしていません。なぜなら、何か素晴らしく、美しいものが生まれる可能性があるからです」と述べました。しかし、「これまでに応募されたAI生成作品の中で、十分に優れたもの、または興味を引くものはありませんでした。私たちは、映画が何を伝えようとしているのかにより関心があります。どのツールを使ったかよりも、その表現が面白いかどうかが重要です」と語っています。

ユッカ=ペッカ・ラークソ氏も同意し、「私たちも同じ経験をしています」と述べました。「どのようなツールを使うかは問題ではなく、それを革新的で新しく、興味深い方法で活用できるかが重要です。また、倫理的な問題もあります。このようなツールをどう定義し、どう管理するのかを考えなければなりません。これは映画や創造性、さらには人間そのものをどう定義するのかという、非常に深い問題につながります」。
「私たちが求めているのは、既存の枠に収まらない何かです。おそらく、すでにAIで編集された映画はあるでしょう。しかし、AIは過去に存在したものをコピーするだけです。独自のアイデアを持ち、それを面白い形で表現できる人が、映画の新たな可能性を切り開くのです」ともコメントされました。

「映画祭の未来」について

ストリーミング時代においても、映画祭は決して消えないと、映画祭関係者は考えています。「ラジオ、テレビ、DVD、Blu-rayが登場しても映画館は消えませんでした」とユッカ=ペッカ・ラークソ氏は述べています。
「短編映画祭は、映画業界の研究開発の場でもあります。新しい映画制作の手法を模索し、映画監督たちは互いに影響を与え合いながら、新しい体験を生み出していくのです」。

フランシスカ・プリハディ氏は、「映画の未来は明るいと思います。そして、映画監督たちが『暗いテーマ』を扱う中でも、観客が楽しめる作品を作り、希望を持ち続けられるようにしてくれることを願っています」と語りました。

国際会議の模様は、YouTubeで詳細をご覧いただけますのでぜひご覧ください。