【会場レポート】@表参道ヒルズ スペース オー会場 / 23日(水)
本日、表参道ヒルズ スペース オーで、同会場ラストの上映日を迎えました。
いずれも優秀賞が米国アカデミー賞短編部門ノミネート候補につながる部門であるオフィシャルコンペティションsupported by Sonyの3プログラムと、世界最高峰のCGアニメーションが堪能できるプログラムと合わせ、合計4プログラムをお届けしました。
連休明け、あいにく雨の日となりましたが、初回のCGアニメーションでは、カラフルでポップな『THE PEAK』の髙橋聡監督に上映終了後のQ&Aにご参加頂きました。
高橋監督は、過去のショートショートで「The Gift」という作品も紹介しており、今回、ストーリーを伊藤たけしさんと組み立てた経緯をお話頂きました。
夜中にトイレに行きたくなる、という世界共通の出来事を、世界中の子供たちにみてもらいたい、という思いがコンセプトで、今回の冒険を通じて、おトイレにめがけていく女の子を綺麗に描きたかった、とのコメントでした。
難しかったのは、トイレに行きたくなる女の子の顔の表情やしぐさが、世界でも通用するかということで、監督が海外のスタッフにも相談、アンケートもとりながら、紆余曲折なプロセスだったことを話されました。残念ながら、NGとなったネタもあったようです。
作品にでてくる水の表現も、いまでは実写映画の制作で使われるようなソフトウェアもあるのですが、今回、監督がこだわったのは、クラシックなディズニー映画にでてくるような、手で書かれたような絵のタッチを目指したそうで、それをCGでもうまく表現ができたそうです。
さらにアジア & ジャパンプログラム 9では、『IDOL』よりリンゼイ龍子監督、キャストの根矢涼香さん、撮影監督のMatt De Sousaさんが登場。
まず、龍子監督に、この作品のアイデアについて聞いてみました。「もともとは、こどもアイドル業界に興味があったのと、自分が暗い話が好きなので、子どもを誘拐する作品のアイデアがありました。そしてたら、自然にその二つのアイデアが一緒になったという感じです」とコメント。
主人公の子どもの母親役だった根矢さんもこの作品のオファーが来た時は正直、びっくりしたそうでした。「自分の周りにも、こどもをアイドルしている親はいなかったですが、こういうことは起きないことはない、と思いました。挑戦できる役なのでやってみたいと思いました」と語りました。
DeSousaさんは、カメラマンとして日本での撮影は難しいかどうか、という質問に対し、「もちろん外での撮影は簡単ではないですが、準備万端であったのでリハーサルを通じ、スタッフも優秀だったので問題ありませんでした。いいロングテイクの画も撮れました」とコメントされました。
龍子監督にロケーションに関して質問すると「あの楽屋の廊下は、埼玉にある市民会館なのですが、300席ほど座れるホールを借りました。ただ、そこではなくて楽屋への廊下を意図的に使うのが目的でした。マンションはプロデューサーが以前、別の撮影で使用した場所を借りました」と話しました。
また、子役を起用する経験について監督は「才能ある子どもたち。プロでした。事前準備もしっかりしてくれて指示を出しやすくかった」とコメント。
撮影は3日間だったということです。
最後に「あのラストは、母親の為の行動だったのか、子どもの為の行動なのか?」という質問に対して、監督は「それは、観客にお任せします」との回答でした。
その後、『多日想果』から、主演も演じられた大門嵩監督とキャストの竹田哲朗さんが登場。
大門監督は「この作品はショートショートが無かったら実現していなかったのです」というコメントでトークを始められました。
以前、監督がプロデュースしたショートフィルムがショートショートの学生部門で受賞し、その後、海外の映画祭でも紹介されていったとのこと。
「台湾の高雄映画祭に招待され、高雄に行きました。すごくいい街だと思い、と同時に何か撮りたいと思ったのです」と話されました。
ストーリーのアイデアとしては、監督が昔の恋人と似た人と渋谷で見かけた経験があり、その設定を台湾にして話を膨らませた、ということでした。
撮影は高雄で10日間、東京で1日という合計11日間だったとのことです。
撮影の最初の3日間は、主演女優の藤原希さんに実際にラーメン屋台でアルバイトをしてもらい、ラーメン作りを習ってもらったとのことでした。
また、高雄の撮影状況については、「台湾は撮影に関して寛容でした。外国からの撮影があまりないのか、いろんな方からうちの店でも撮っていいよと声をかけてくれたりと協力的でした。たくさんの差し入れもあり、食べきれないほど料理がでました」とコメント。唯一困った事として、「台湾のお国柄、バイクが多く走っています。情緒があるのでいいんですが、どのセリフにもバイク音が入るので。伊藤さん(録音担当)が最後、整音の際にバイクの音をすべて消してくれました。マジックです。皆さんも録音は伊藤さんにお声がけください」と笑いを誘っていました。
最後のアジア & ジャパンプログラム10では、『緑の雪』から古川原壮志監督と『リッちゃん、健ちゃんの夏。』より大森歩監督とキャストの笈川健太さんの2組が登場しました。
まず、『緑の雪』から古川原壮志監督の自己紹介から始まりました。
「2年前に『NAGISA』という作品でショーショートに入選をして、またこの映画祭に、この状況で上映ができて大変うれしいです」とコメント。撮影は2018年12月くらいだったそうで、キャストの2人は少人数のオーディションで行い、決めた理由は、友達や家族にも介護を受けている人がいたので「この方ならこういう演技ができるのかな」と想像できたそうです。
監督自らが介護施設、老人ホームでムービーをとってリサーチし、俳優にそれらの映像を観てもらって演出をしたそうです。
また、この映画を撮るきっかけは、亡くなった祖父母だったそうです。「祖母が寝たきりになり、あっという間にしゃべれなくなった。そのことや身の回りにも介護されている人はいたので、自分のパーソナルの思い出もあります」と監督。
また、介護をしていた女性の役について、「実際、施設でお話を聞いて介護の大変さを理解した上で演技をしています。介護している人は、一見、乱暴そうですが、ちゃんとやっている。(介護者と老人との)距離感を保つところがリアル感がでた」とコメント。また、美しい映像は八王子や神奈川県内の公園で、介護の様子を描いた家は3~4日かけて都内で撮影されたとのことでした。
MCのジョンは「日本映画らしい画は海外にも通用すると思う。ぜひ、海外映画祭にも応募して!」と監督に促しました。
そしてこの日最後のQAは、『リッちゃん、健ちゃんの夏。』より大森歩監督とキャストの笈川健太さんが登壇。
大森監督からは、この企画に関して「佐世保映像社で佐世保をPRする企画があり、お声掛けを頂きました。キャストも決まっていて、10歳ほど歳の差がありましたが大人びた武イリヤさんと童顔の笈川さんなので、ふたりが恋をする話にしようかな、と」とコメント。
MCのジョンから「禁断の恋」という表現が出たのに対して、監督は「禁断の愛でもないと思う。先生と子供が好きになるのはよくあること。そこに踏み込めないのが人間らしい。重苦しいよ映画よりは、長崎の黒島というところが、カトリックと仏教徒が一緒に住んでいて迫害もなかった場所でもあるので、年齢とか立場を忘れてバカンスを過ごせる楽しい話を考えた。」と話されました。
笈川さんはこの脚本を読んだ時、「しゃべらないキャラであるし、普段の僕と空気感が違うので、どうやっていこうかなと。しかも中学生と先生の話。監督が言うように禁断ではないが、そういう経験がないのでどうリアリティをもたせればいいか考えました」と話されました。
また、監督は「俳優たちのリハーサルはしなかった。二人とも東京の出身なので、佐世保の方言をマスターしてくれ、とお願いをしたくらいですかね」とコメント。笈川さんも「現場に方言指導の方がいたので、勉強しながら修正しました」と話されました。
また、キャラクター作りに関して、監督は「さえない役(けんちゃん)の方が難しかった。笈川さんにはキャラクターを年表にまとめてもらった。例えば、ケンちゃんの両親は何歳なのか、初体験はいつかなど」と話し、笈川さんも「キャラクターが人の目を見ない人なので、撮影する前に、生活の中に組み込んで馴染ませた」とコメントされました。
本プログラムQ&Aのアーカイブはこちら ※冒頭映像が欠けています
本日にて、オフィシャルコンペティション supported by Sonyの会場でのプログラムはすべて終了しました。今年の映画祭上映作品の多くは、映画祭期間中オンラインでもご視聴頂けます。オンラインでの作品視聴はこちら
https://shortshorts2020.vhx.tv/