ショートであれ長編であれ、人の心を動かすもの・残るものに出会いたいと思いながら観せてもらいました。フィルムフェスティバルである訳あだから当然、「映像を信じる力に満ち溢れている作品」を基準に選びました。
好きな作品、思いもつかない作品に出会いました。そして素晴らしいセリフにも…。 「THE BAKE SHOP GHOST」の老ケーキ職人は言いました。 「ケーキ作りはどんな想いを込めるかだ!」映画も全ての創作も同じだと思う。 みなさんはどんな想いで映画撮りましたか?
全体的にわずか数分間でインパクトを与える作品よりも、少し長めでストーリーを大事にしている作品が多かったように感じました。長編ではない分、限られた時間で物語を進めていくのは大変だと思います。
中にはストーリーが少しわかりにくい作品もありましたが、どの部門も甲乙つけがたいものがありました。
日本の作品と海外の作品の焦点の置き方の違いにもギャップがありました。それは私が日本人だからでしょうか。普段、何の気なしに生活している中にも意外とショートフィルムのヒントがあるかもしれません。
ショートショートに関わった全ての人が、心と体とパワーをかけて全力で作った作品だと思うと、私には判断するには重かったし、何度観ても選べなかった。
● インターナショナル
心が温まる作品を選びました。短い時間に集約された、心の底を映す、わかりやすい作品が、私は好きです。「Proof of Love」は障害者の生活を、健常者の彼の愛も通じて描いており、この映画が皆に観てもらえますように!!と思った。2年前交通事故で障害者となった夫がいる私としてはどうしても選びたかった作品。
「GONE-」は人間愛を感じる作品。最後まで観て、そのあと心が温かくなり、そして涙が溢れる…。まさにショートならではの映画だと思います。
「THE SCARECROW-」は学校、家庭の中で子どもがに好奇心を持ち始めるが、両親は字が読めない環境。父親は自分のニノマエを作りたくないと考えるのか。良い作品だった。
● アジア
少しパワーに欠けていたかも…と思ってしまいました。その中で衝撃を受けたのが「Destiny Fireworks」。アニメでは表現できない映像。食物連鎖の頂点である人間が食べられるなど、色々な深い意味とメッセージを感じた。
「小言」は女優のおばさんのパワーがすごい!「Pair of Shoes」は戦争の倦怠感を伝えるのも映画の仕事なんだな、と思った。
● ジャパン
戦時下の日本、国籍のわからない子どもたちを大人たちが助ける姿に、戦争映画だけではない、温かいものを感じた。メッセージとして残さなくては、アメリカ人にメッセージを伝えたいと感じた。
「カクレ鬼」はアクションと日本古来の鬼伝説と、それに怯える子ども。親のことを思い出しながら、戦って鬼心になってしまうのは、鬼にならないと戦えないから。素晴らしい作品だと思う。 「Amerigo」はアニメで夢もあり、女の子の心が少しずつゆらぐ様を作品のなかでとても美しく感じた。不思議大好きな私にははずせなかった。 「The Bakeshop~」も捨てがたく、私は大好きでした。
今までの経験で培ってきた美意識に基づき審査しました。
インターナショナル部門は非常にレベルが高いと感じました。
実はあまり知られていない事件を、その時代背景を良く調べ描く作品が印象的だったジャパン部門、 中国らしいセンスで空間の広がりを感じる作品など意欲作が多かったアジア部門。
1位を選ぶのは非常に難しかったです。
映画祭に参加できたことにとても感謝しています。
尊敬すべき日本のアーティストの皆さんと一緒に、審査員をつとめられたことは大変光栄でした。
また、世界中の才能あふれるフィルムメーカー達と出会えたことも非常に意義深いも のでした。
私の著書「 How Not To Make A Short Film: Secrets From A Sundance Programmer」に 書いたように、ショートフィルムの制作はある意味贅沢で、根源的な芸術の一つです。
良質のショートフィルムは、古くからあるようなストーリーでも作家の新鮮なスタイル、熟考されたキャスティング、無駄を省いた編集により、新しく感じるものです。 そのような良質の作品をセレクションされたプログラミングスタッフに敬意を表します。
サンダンス映画祭時代、私もこのような素晴らしい仲間達と一緒に働けていたら なんと幸運だったでしょうか。みなさんのスタッフをどうぞ誇りに思ってください。
初の来日、そして素敵な映画祭を体験し、近い将来必ずまた戻ってきたいと思っています。改めて、ありがとうございました。
*五十音順、敬称略