東南アジアの「今」をお届け! 東南アジアプログラム&シンポジウム
2016年05月04日
『時間』(MASA) (ブルネイ/2015) Aznniel Yunus監督作品
国際交流基金アジアセンターとショートショート フィルムフェスティバル & アジアが昨年より始めた、東南アジアプログラム&シンポジウム。今年で2回目の実施となりますが、東南アジアプログラム&シンポジウムとは一体どのようなものなのでしょうか?
昨年度はカンボジア・インドネシア・ラオス・シンガポール・東ティモール・フィリピンからの作品が上映されましたが、本年度の東南アジアプログラム&シンポジウムでは、ミャンマー・マレーシア・ベトナム・タイ・ブルネイの5か国から作品をチョイス。各国それぞれの理由で映画制作はなかなか難しいようですが、そんな中でもユニークで素晴らしい作品が生み出されています。
『ネコとオレンジの種』(The Cat and The Orange Seeds)
(ベトナム/2014) Nguyen Le Hoang Viet 監督作品
『ネコとオレンジの種』は、事故で全身の感覚を失った夫と、そんな夫を世話し続ける妻の日常を描いた作品。柔らかな色調で描かれている2人の静かな毎日ですが、庭にネコがやってきた日を境に小さな変化を迎えます…
食事もすることのできない夫のために、毎日オレンジをしぼってジュースにして飲ませてあげる妻。全身の感覚のない夫が誤飲してしまわないように、入念に種を取り除く妻の姿から夫への深い愛が感じられます。
ところどころ、夫が元気だった頃の出来事が挿入されていますが、そういうシーンから妻の切ない、やるせない気持ちが伝わってきます…
『ネコとオレンジの種』は、会話がほとんどなく、映像のみによって語られています。そういう意味では、どこか昔のサイレント映画を連想させる作品です。映像メディアの持つ力の強さを改めて感じさせられます。
「ベトナムらしさ」や「ベトナム特有」のものを描いた作品ではありませんが、「愛情」というものは世界共通だな、ということを再認識させてくれる作品です。
『学校へ』(To School)
(ミャンマー/2015) Soe Moe Aung 監督作品
『学校へ』は、ミャンマーの田舎の村で母親と暮らす少年ヤザールを描いた作品です。ヤザールは学校へ行きたくてたまりませんが、ヤザールの母親は学校へ行かずに働いて欲しいと考えています。
日本だと、ヤザールのような小さな子が学校に行かないだなんてありえませんが、金銭的な理由や家庭の事情で学校に行きたくても行けない子どもが世界にはまだいるということも事実です。
自分が学校に行く夢まで見るヤザール。ヤザールがすごく可哀想に思う一方、女手一つで子どもを育てるヤザールの母親にも感情移入してしまいます…
ヤザールのお母さんが悪いのではなく、お母さん1人の力ではどうすることもできない問題。ヤザールとお母さんの置かれている状況を見ていると、すごくやるせない気持ちにさせられます。
学校に行っている他の子どもたちを横目に見ながら、ウナギ漁をして頑張って地道に学校に行くためのお金を貯めるヤザール。果たしてヤザールは学校に行くことができるのでしょうか…?
日本では学校に行きたくないと言う子どもたちも多くて、確かにそれにはそれなりの理由があるのでしょうが、学校に行ける、勉強が出来るという日本では「当たり前のこと」が当たり前でない国がある…
『学校へ』はヤザールの日常の描写を通じて、そういう問題に気づかせてくれる作品です。
『僕の彼女、ロジータ』(Rozita Binti Roslan) (マレーシア/2014) Taufiq Kamal Abd Rahman 監督作品
東南アジアプログラム&シンポジウムは、上映・シンポジウム共に無料です。他ではなかなか見ることが出来ない珍しい東南アジアのショートフィルムを映画館で見ることができる上に、東南アジアのショートフィルムの「今」についても学ぶことができる…これは見逃すわけにはいかないですね!シンポジウムは1回のみの開催ですが、上映に関しては複数回予定されていますので、ご予定も合わせやすいのではないでしょうか。是非上映・シンポジウムに参加してくださいね!
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- ライター情報 岡村友梨子
イギリスのロンドン大学キングス・カレッジで映画学の修士号を取得後、拠点をドイツ・ベルリンへ移し、映画のプロダクションとキューレーションに携わる。執筆のご依頼やメッセージはyurikokamura@gmail.comまで。
Twitterアカウント: lily0146
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