『Ave Maria』 コミカルにパレスチナ問題を考えよう! カンヌ特集プログラム
2016年05月22日
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2016 公式サイトオープン!
今年のショートショート フィルムフェスティバル & アジア開催まであと1か月を切り、 上映作品の中からとっておきのプログラムやイベントをご紹介!今回のプログラムは「カンヌ特集プログラム」
『Ave Maria』
監督:バジル・カリル /フランス・ ドイツ・パレスチナ / 15:00 / 2015
ガザ地区に住む5人の修道女たち。安息日のある日、修道院の壁に車をぶつけたイスラエル人の入植者家族を、パレスチナ人の修道女たちが助ける。パレスチナ人監督による短編コメディ映画が、アカデミー賞やカンヌ映画祭の短編部門でノミネートされた。
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難しく考えすぎちゃってとますます頭を抱えてしまう・・・そんな経験はないですか?
ちょっと面白おかしく考えると、困難をもっと柔軟に解決することができますよね。
パレスチナ問題というと、複雑で難解なイメージ。現在のテロ問題の原点ですが、実はもっと歴史が長く、そして複雑です。パレスチナという場所はキリスト教とイスラム教とユダヤ教の聖地。ここを巡っての宗教争いということですが、それぞれの信者の皆さんは文明開化の時期からずっと争ってきた訳です。グローバル化が進む中で、ローマ帝国になったり、オスマン帝国になったりして、いつまでたっても自分たちの土地として過ごせなかったんですね。近現代に入ると戦後のイギリス外交等でさらに複雑になってしまいました。「もう我慢ならぬ!」という現地の人々の怒りと憎悪がテロとなってしまったのは至極当然なのかもしれません。
『Ave Maria』はパレスチナ問題をもっと砕いて捉えたコメディ。
いちいちクスッと笑ってしまうし、最後にはワハハッと大笑いしてしまう程のお笑い度!
けれどもワンシーンごとに深い意味が含まれているんです・・・!
私のお気に入りのシーンは最初のシーンと、中盤の喧嘩のシーン、そして一番最後のシーンです。全部話してしまうとネタバレになってしまうので・・・冒頭のシーンだけお話しますね。
冒頭のシーンは、キリスト教の教会で修道女達が静かにお祈りをしています。静寂に包まれた空間で、キリスト教の装飾が映し出されています。私はここで一回、本当にパレスチナの話なのか疑ってしまったほど。
ここで、「あっ」と気づいたことがあります。
もしかしたら、この静寂こそ、キリスト教徒だけでなく、イスラム教徒、ユダヤ教徒が求めているものなのかもしれません。自分の信じる神様を思って、静かにお祈りする。パレスチナという聖地だからこそ、そういう暮らしをしたい。現地の人々はそう思っているのかもしれないと思いました。
たった15分のショートフィルムですが、映画一本くらいの大きなテーマと、深く考えさせられるポイントが沢山散りばめられています。また、キャラクターがコミカルで可愛いらしい。物語も、直接的な表現は出てきません。あくまでシュールに進んでいきます。
『Ave Maria』を観て、パレスチナという場所、パレスチナに暮らす人々、そして今起こっている複雑な問題を親身に感じることができました。これだけ複雑で困難な問題を笑い話にしてしまうのは気に障るという人もいるかもしれません。けれども、ちょっと視点を柔らかくしてあげることでもっと問題を身近に感じることができます。『Ave Maria』を観て、パレスチナ問題だけでなく、世界各国で起こっている問題や、自分の住んでいる地域、社会の問題をコミカルに、シュールに、考えてみませんか?解決の出口が案外早く見つかるかもしれません。
『Ave Maria』はカンヌ特集プログラムで上映
- ライター情報 すらすら
「映画を観る時間がない…」「長い映画は苦手!」という方に、ショートフィルムはとってもおすすめです!短い時間でも、奥深いテーマと繊細な描写が詰め込まれているショートフィルム。まるでエスプレッソのような味わい深いショートフィルムの世界をご紹介します!
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