LAインタビュー ハリウッド・ショーツ創立者 キムバリー・ブラウニング氏に上映イベントの重要性についてお伺いしました

LAインタビュー ハリウッド・ショーツ創立者 キムバリー・ブラウニング氏に上映イベントの重要性についてお伺いしました

2010年に行われた、世界の映画業界で活躍する著名プロデューサーや監督への連続インタビュー。

長編を取りながらも短編映画を製作する意義とは?短編から学べる映画製作技術とは?ハリウッドや世界の映画業界で活躍する人々にお伺いしました。5年後でも色あせないインタビュー内容をお楽しみください。


Kimberley-Browning

 

ハリウッド・ショーツ創立者。短編作品のプログラムを毎月、ハリウッドで行っている。また、アフリカ系アメリカ人のフィルムメイカー特集(毎年2月)や、女性特集(毎年4月)、アニメーション(10月)をテーマにした上映会を定期的にハリウッドのエジプシャン・シアターで行う。ブラウニング氏が創立をしたハリウッド・ショーツwww.hollywoodshorts.comは通常、毎月第3日曜日にショートフィルムの上映会であるが、2日間の連続上映で、「映画祭(コンペ部門無し)」としても不定期に活動をしている。ハリウッド・ショーツにはAVID社、コダック社、パナビジョン社の他、SAGインディーwww.sagindie.orgからも支援を受けている。SAGインディーとは、全米俳優協会(SAG)が擁護する団体で、所属する俳優をショートフィルム製作プロジェクトに格安で紹介する他、俳優との契約書作成の法務料などが免除されるシステムになっている。このハリウッド・ショーツの他、全米において多くの映画祭とタイアップしている。
また、Key Code Media社からは、AVID、ファイナルカットプロなど、無償提供を受けている。ハリウッド・ショーツに関わる作品にポストプロダクションの段階で、無償協力する代わりに、作品のサンプル映像を無償でKey Code Media側に提供するのがディールとなっている。ハリウッド・ショーツは、1998年10月に誕生。時はプレ・インターネット時代で、ロサンゼルスでショートフィルムの定期的な上映は皆無であった。自主映画製作者が、何千ドルを払って劇場を借り、上映案内のポストカード案内制作など、印刷物の費用もかかった。そんな中、スポンサーありきで、気軽にテキーラでも飲みながら、ショートフィルムを楽しむ場所を作ろう、という発想から生まれた上映企画であった。

 

ハリウッド・ショーツ創立者に聞くショートフィルム上映イベント重要性について

ブラウニング氏: 「自主制作者個人の自覚のためにも、映画祭や、こうした上映会に参加するのは意味があります。自分が作った作品に対して、どう評価があったか。反対に、映画祭も運営者の立場でどんな意義があるのか、自覚する必要があります。インターネットの可能性は高いですが、上映会では、クリエーター同士の関係を築くことができます。そこで、自分の作品を売り込むために必死になる、自分の観客を知ることなど、以後それぞれが長編映画で仕事する上においての倫理感覚も養われるでしょう。」「また、映画祭では、その時代の仲間が必ず、生まれるのです。ルーカス、スピルバーグ、スコセッシなど、同年代の監督達はそうした映画祭やイベントを通じて、仲間になっていったのです。私の監督作品の撮影監督も映画祭で知り合いました。アメリカでは、海外にあるような国からの助成金システムが皆無に近い中、映画祭に参加する意義は大きいです。」

現在、10人に1人は失業といわれるロサンゼルス地区。ショートフィルムなど自主制作映画の状況を聞いてみた

ブラウニング氏: 「常に経済景気が悪くなったり、政治による反動を受けたとき、まず最初にアートの分野やスポーツが予算カットの対象となります。私自身もアメリカ社会において、マイノリティーに属する立場でいうと、常に特権のある者とそうでない者の差に苦しみます。映画は、趣味、娯楽と思われているのでしょうね。いずれにせよ、我々アフリカ系アメリカ人、日系アメリカ人、韓国系アメリカ人、そしてもっとも数が多いヒスパニック系アメリカ人も含め、マイノリティー・グループにとっても今後、個人で映画を製作する環境が整いつつあります。今は、CANON 7Dを1日中200ドルでレンタルできます。コンピューター上で編集もできます。3世代に渡って、貧困層で育った18才の若者が「自分の伝えたい物語」をようやく伝えることができるようになりました。これから面白くなりますね。」

アフリカ系アメリカ人ということもあり、ブラウニング氏の言葉からは、「マイノリティー」という言葉が多かった。映画製作はどちらかというと白人層の娯楽である、という認識が今のアメリカにも潜在しているのであろう。ビジネス的なチャンスや、「名刺」代わりのショートフィルムという観点を越えて、氏の話からは、ショートフィルムの可能性として、マイノリティー・グループの人種、そのコミュニティーが、ショートフィルム、短編映像コンテンツを通じて、今後メッセージを訴え、発信していくことが大きい、というのが印象に残った。

 

キムバリー・ブラウニング氏

映画監督・フェスティバルディレクター