学生の短編映画の出品を支援! LAインタビュー:サンドリーヌ・キャシディー氏 

学生の短編映画の出品を支援! LAインタビュー:サンドリーヌ・キャシディー氏 

2010年に行われた、世界の映画業界で活躍する著名プロデューサーや監督への連続インタビュー。

長編を取りながらも短編映画を製作する意義とは?短編から学べる映画製作技術とは?ハリウッドや世界の映画業界で活躍する人々にお伺いしました。5年後でも色あせないインタビュー内容をお楽しみください。


フランス人のキャシディー氏は、1990年、フランスのユニフランス(フランス映画庁管轄のもと、1949年にフランス1901年の団体法に基づき設立された仏映画振興機関)で同時のダニエル・トスカン・デュ・プランティエ会長のアシスタントとして入社。その後、ユニフランスの短編部門に配属され、現短編部門部長のクリスティーヌ・ジャンドル氏とは同期となる。ジャン・ピエール・ジュネ監督の「エイリアン3 (1992年)」の通訳も経験し、1998年から南カリフォルニア大学の現職に携わる。当時からUSCは毎年、多くの学生作品を製作しているが、大学にはそれらの短編作品をプロモーションしていくノウハウ、戦略が全く無かった。大学側に、業者から配給のリクエストもあったが、あくまでもリクエストがあるたびに対応をしていた、という。USC側から積極的に映画祭へのエントリー、配給へのアプローチは無かったのである。そこで、キャシディー氏が大学に提案。1990年からユニフランスで培った短編業界のノウハウを生かすべく、USCで採用された。「当時、USCの誰もがクレルモンフェラン国際短編映画祭という名前さえ知らなかった」と振り返る。現在、キャシディー氏は、USCで、学生作品の映画祭出品、海外におけるUSCのプロモーション、作品の配給業務を担当している。また、USCで製作されるすべての学生作品は、USCが権利の帰属となるので、配給会社、業者による売買が生じる場合は、キャシディー氏が全て窓口になり、権利交渉、契約書の作成など全て行う。

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アメリカの大学が取り組むショートフィルムのサポート

University of Southern Californiaとは?

大学では、クリティカル・スタディといわれる映画の歴史から現在のテクノロジーを講義ベースで学ぶ以外に、映画製作(Production)がメインとなる。4年制内では、3年の映画学科の勉学のうち、講義のほか、実際、毎年1本ずつ、映画製作を行わければならない。プロダクションのクラスだが、それぞれの生徒が場合によっては他の生徒の作品のスタッフをしたり、プロデューサーになったりと、自分の専門分野以外の仕事も学ぶ目的がある。毎年、学生作品だけで300~400本のショートフィルムが大学内のスタジオで製作される。

現在、キャシディー氏がコンピレーションとしてDVDにまとめる学生作品は、学科で2年目と3年目に製作される学生作品だという。毎年、4月に大学内で学生映画祭を開催し、授賞式は、ハリウッドにある全米監督協会(DGA)のスクリーニングルームで行われる。ここにハリウッドのエージェント達を招き、将来を担う若い才能をプロモーションしていく。地元、ハリウッドにあるだけに、現地で直接、アピールできるわけだが、海外の映画祭や海外の映画製作者関係にもアピールするため、キャシディー氏がDVDに最新作をまとめて、海外の映画祭、テレビ会社、インターネット業者等に売り込んでいくことになる。とにかく、卒業後には、ハリウッドの業界で「即戦力」になる人材を育てあげるのが大学の映画学科の目的と強調された。

配給に関して

まず、学生作品(ショートフィルム)は、映画祭で上映されるのが初めてというケースがほとんどである。その後、インターネット、テレビ、DVDのコンピレーションといった順になる。しかし、それも、その年のトレンドや新しい企業の風、試みがあることで順番が変わる。2000年台初期のwww.atomfi lms.comが流行った頃は、インターネット上での視聴が確立されたような時期があったが、その後、テレビ(主にケーブル)での視聴も復活した。

キャシディー氏も、モンロー氏と同じく、www.hulu.comとwww.babelgum.comの名前をあげ、「現状は大きな利益にはつながらないが、みんなが注目している」とコメント。www.babelgum.comは、世界最大の短編映画祭といわれるクレルモンフェランのマーケットにおいても、積極的にプロモーションを行っているという。また、ウェビソード(webとepisodeが合体した造語:インターネット上で展開される番組の一部、予告編、ミニシリーズのコンテンツ)の需要も高まり、今後は、その製作のみでの仕事が確立していくだろうとコメントした。

映画祭の重要性について

キャシディー氏は「生徒が自分の作品を初めて、観客と一緒に見る貴重な体験の場。観客が自分の母親だけでないということも理解できるはず。また、映画祭においてコネ(ネットワーキング)を作る最大の機会。また、他の作品、他の監督達にも会ってインスピレーション、モチベーションを得る機会の場でもある。」と語る。「監督にとっても、自分の世界が初めて外の世界に出た瞬間です。外の世界とは、観客であり、エージェント、マネージャー、プロデューサーの目にとまる機会です。作品が、(名刺)になる瞬間です。」とキャシディー氏は続ける。また、「映画祭自体が、ショートフィルム業界そのものなのです。映画祭関係者はどこかでつながっているし、どんな作品があるか、映画祭同士でも話あうし、作品を推薦し合います。ネットワーキングが大事ですね。」と付け加えた。

ショートフィルムはいつまでたっても、「名刺」がわりなのか?

キャシディー氏: 「短編作品は、学生にとって、常に実験の場であり、すばらしい勉強の過程の道具です。失敗もそこで学びます。長編映画の現場では、そうした余裕はありません。楽しくも悲しくも、「安く」経験できるし、重要な位置にあります。ビジネスになのか、というと今はまだ疑問です。過去20年にわたり、新しいテクノロジーの到来とともに、試行錯誤がありますが、ウェブソードの重要性がここ高まるのと同時に、私の考えでは、短編にも、「観客がこぞって観に来る仕掛け」が必要と感じます。たとえば、ネームバリューがあるスター達をあえてショートフィルムに出演させるとか。まだまだ、ショートフィルムのビジネスとしては、固い基礎が無いですが、ショートフィルムは今後もたくさん、製作され続けます。作家や、人々が創造性をもって、自由に表現したい実験の場としても、ショートフィルムは生かされるのです。なので、商業的なショートフィルムを製作する、というターゲットで、ビジネスは展開されるべきです。大きなビジネスになるのは時間の問題でしょう。


サンドリーヌ・キャシディー氏

南カリフォルニア大学短編作品統括