【動画・書き起こし配信】フィルムメイカーズトークPart2配信開始!
特別にセレクトされた世界各国からショートフィルム上映後、去年のSSFF & ASIAグランプリ受賞監督 Yosep Anggi Noen 氏や映画「マラソン」で500万人を動員したチョン・ユンチョル監督に参加を頂き、映画制作について「トーク」いただきます。
各作品のアイデア、脚本、資金調達、予算、キャスティング、 撮影、編集、作品のスタイルについてなど聞くほか、インターネットを中心に未来のショートフィルムの可能性についても探ります。ショートフィルム制作のAからZまで知りたい方はぜひ、動画をご覧ください!!
『フィルムメイカーズトーク』
■キャスティングの重要性
ヨセプ・アンギ・ノエン監督:長編の場合もそうなんですが、キャスティングが一番大事だと思います。作ってまず皆さんが見るのは役者であり、物語を観客に届けるのも役者であるので、とても気をつけてキャスティングをしています。このショートフィルムに出演していた二人の役者は、私の長編映画にも出演していて、私たちはその時からの知り合いです。男性は舞台監督であり、俳優もしています。女性は有名というわけではないですが、インディペンデント・フィルムによく出演し、会社で秘書としても働いています。長編映画ではプロではない役者にも出演してもらいました。ロケーションスカウトに行った際、その土地で出会い、彼らと話し現地に住む彼らのエネルギーを感じ取り、その出会いにより脚本を書き直したりもしました。
というのも、私はスタイリッシュな映画を作るのではなく、出来るだけリアルなドキュメンタリータッチのある映画を作りたいので、現地にいる人を使うことで、よりリアルな感じが出ると思い、そのようなキャスティングもします。大切なのは、一つの映画制作の中で、変化を起こすきっかけとなる役者 2、3人をキャスティングすることです。この二人は100%プロフェッショナルな役者ではありませんが、二人が演じたキャラクターは映画のなかで重要な化学反応を起こしてくれました。
チョン監督:長編映画『マラソン』は真実を元に作られたフィクションで、プロの俳優を使いました。『バイク・レディー』はドキュメンタリーなので、実在するナショナルハンドサイクリングチームの一員となった女性の真実の物語なのですが、15分という短い尺の中で、女性のキャラクターを深く掘り下げて描写するのは困難でしたので、それは最初から諦めていました。このドキュメンタリーでは、ハンドサイクリングの空気感、走るという感覚、また感情を深く表現したかったのです。
ショートフィルムを以前作った時、たくさんのことを伝えようとして上手くいかなかったことがあります。
ですから、この作品では伝えたいことを一つにして、走るという感覚にフォーカスを当てました。また、サクセスストーリーを作りたかったわけではなく、彼女の真の生活を見せたかったのです。彼女は障害者でありますが、会社に勤め、ナショナルチームとして活動し、2つの仕事を両立させています。この事実を見せるということが私たちにとって非常に重要で、私たちはこのドキュメンタリーで一人の人生にフォーカスを当てただけなのです。
私がここで伝えたいのは、人生において一つのことだけでなく、何か別のことで超越してみるのも良いのではないかということです。いくつかの作品を作り、キャスティングが全てであることが分かりました。ヨセプの映画を見ましたが、キャスティングが素晴らしかったと思います。女性の表情だけで、セリフがなくても物語っていて素晴らしかったです。素晴らしい演技力というのは重要で、監督よりも重要視されると思います。
ハリウッド映画でキャスティング・ディレクターが存在するのはその為です。以前はその重要性が分からなかったのですが、キャスティング・ディレクターは大変重要で、キャスティングが全てだと思います。
■フィルムとデジタルについて
ヨセプ・アンギ・ノエン監督:私はフィルムで映画を撮ったことはないのですが、写真は撮ったことがあります。デジタルでより多くの人がアーティスティックに表現できるようになったのは確かです。例えば、私の国インドネシアでは、たくさんの映像コミュニティがあり、そこで毎年多くの映画が作られます。
5Dのような小さなデジタルカメラと友人、そして伝えたい物語さえあれば映画は作れます。問題はテクノロジーが容易に手に入るようになったため、フィルムメーカーが十分なリサーチもせずに、良いストーリーを伝えることを重要視せずに制作することです。映画は誰にでも作れますが 自分たちのためだけに作るのではなく、より多くの人々に見てもらえる映画を作らなければならないと思います。現在、新しいデジタルテクノロジーにより誰もが映画を作れるようになり、映画制作人口は増え続けています。つまならいストーリーは誰も見たくないと思います。ですので、テクノロジーは賢く使い、フィルムメーカーはインパクトあるストーリーや世界観を作り出し、観客が映画館まで行って映画を見るわけですから、見終わった後に何かを感じ取れるものを作るべきだと思います。それが今の映画制作におけるチャレンジだと思います。
チョン監督:残念ながら今はフィルム撮影が困難な状況になっています。しかしハリウッド映画ではフィルムしか使わない監督が何人かいます。例えば、映画『インセプション』『インターステラー』のクリストファー・ノーラン監督彼は成功している監督なので、フィルム撮影する余裕があるわけですが、ほとんどの映画監督がデジタルカメラを使用しています。しかしこの状況はフィルムメイキングのチャンスだと思っています。今では道具が安いため、誰もが映画を作ることができます。例えば、この携帯電話はフルHDなので、長編映画もこれで撮れてしまいます。これは技術的奇跡です。ただし、最も重要なのは物語をどう伝えるか?そして、脚本です。
視覚的に言えば、フィルム映像はもちろんデジタル映像よりも美しいですが、このデジタル化によって、機材が軽くなり、安くなったりなど有利な点も生まれてきました。
チョン監督:例えば、『バイク・レディー』ではデジタルの機材なしでは撮影は難しかったです。ハンドサイクリングはスピードが早く、常に私自身もバイクに乗りながら、主役を追いかけながら撮影しました。 最終コースである丘では、私自身が小さなデジタルカメラを持ちながら1キロ近く走りながら撮影しました。もしもこれが重たいフィルムカメラだったら、撮影は不可能でした。この作品は、デジタルカメラ時代だからこそ作れたものだと言えます。フィルムが失われていくのは悲しいですが、デジタルの技術を上手く利用して、新たにいろんな可能性を生み出していくべきだと思います。
■『バイク・レディー』主演のイ・ソンミ氏 自分がやっているスポーツがもっとたくさんの人に知られるきっかけに
イ・ソンミ氏:はじめまして。この映画祭に参加できて大変嬉しく思います。皆さんと楽しい時間を過ごすことが出来ました。ありがとうございます。私は専門の俳優でもないし、映画は初めてだったので、ハンドバイクというテーマで映画を作るという提案を受けたとき、とても戸惑いました。
すごく恥ずかしかったし、普通の会社員が映画に出ることが可能なのか、すごく笑ってしまったのですが、一応自分がやっているスポーツがもっとたくさんの人に知られるきっかけにもなるのではないかということと、私のような普通の会社員がスポーツも同時に出来ることを伝えられると思い、映画出演を決めました。
チョン監督にはすごく素敵な映像を作っていただき大変感謝しています。これはフィクションではなく、ドキュメンタリーだったので、私の姿を撮ってくださっただけなので、映画を撮るという感じではなかったです。