「MILBON BEAUTY PROGRAM」(オフィシャルレポート)
米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2024」(SSFF & ASIA2024)と美容室向けヘアケア・化粧品メーカーの株式会社ミルボンのコラボレーションによる「MILBON BEAUTY PROGRAM」が6月8日(土)、表参道ヒルズ(東京・表参道)のスペース・オーにて開催された。応募作品の中から、“美しさ”をコンセプトにミルボンと映画祭が選んだ3本のショートフィルムが上映されるとともに、ファッション誌やラジオ、文筆活動など幅広い分野で活躍する市川紗椰さんとSSFF & ASIA 代表の別所哲也によるトークセッションが行われた。
市川さんと言えば、多くの趣味を持つことで知られ、そのジャンルは鉄道に相撲、音楽や読書など多岐に渡るが、こうした趣味を見つけるコツを尋ねると「趣味というのは結局、自分が『楽しい』と思うことなので、自分にとって『これが面白い』と感じるアンテナを張るしかないと思います。趣味を作るのが難しい、見つからないという方は、過去に『これが楽しかった』という記憶を思い返して、それが“趣味”だと言い張ればいいと思います。『あの時、あのハンバーグがおいしかった』という思い出から、いろんなハンバーグを食べて『私の趣味はハンバーグ巡り』ということでいいんです」と自分の中の“楽しい”を大切にすることが重要だと語る。
特に鉄道に関しては筋金入りの“鉄っちゃん”を自称する市川さん。別所さんから「見る、撮る、乗る…いろいろありますが、なに鉄ですか?」と尋ねられると「強いて言うなら“音鉄”ですね」とモーター音やジョイント音、車内アナウンスなどの“音”を楽しむ鉄道好きだと告白する。別所さんは音鉄というワード自体、初耳だったようで驚いた様子だったが、市川さんは「(鉄道からは)美しい音が流れてきます。ガタンゴトンという音ひとつとっても、すごく情報量が多いんです。レールの長さにもよりますし、冬は夏よりもちょっとだけ大きい音が出たり、季節も感じられるんです。趣味で毎日、心が豊かになるというのは気の持ちようで、私にとっては毎日の移動ですら楽しいことです。幸せのハードルを下げてくれるので(笑)、趣味が人生を豊かにしてくれるのを実感しています」と熱く語り、別所さんも「映画祭とはまた別の場で話したいです!」とすっかり引き込まれていた。
多くの趣味が、子どもの頃から好きだったものだという市川さんだが、逆に最近になってハマっているものを尋ねると「最近、天気がいいのでよく散歩しますね。もともと地形や階段が好きなのでそういうものを見ますし最近、加わったのが“ド根性花”探しですね」と明かす。この“ド根性花”というのも別所さんには新鮮なワードだったよう。市川さんは「アジサイも私にとってはド根性花で、道路のわきで排気ガスを浴びながら健気に咲いていて、しかも散らずにガイコツのように枯れていく姿が好きで、毎日、観察しています」とこれまた熱く語ってくれた。
ちなみに別所さんが最近、ハマっているのは「味付け海苔」だそう。「日本のもあれば韓国のものなどいろんな種類があり。ダイエット食にもなるので小腹が空いたときにスナック感覚で食べてます。スーパーで海苔コーナーに行きますね(笑)。佃煮とか、海苔の文化って深いです。アジアの味を感じます。映画の世界もそうですけど、地域性や食文化――例えばお箸を使う国だからこそ反映される文化があると思います」とエンタテインメントとも結びつけながら語ってくれた。
さらに、“美しさ”というテーマに即して、読書や音楽を嗜む中で、市川さんが美しさを感じる瞬間について尋ねられると「意外性を感じる時に美しさを感じますね。音楽でも意外な不協和音など、裏切られて新しい感覚を抱かせてくれるものにドキッとするし、『まだまだいろいろ知らないことあるんだ』というワクワクします。文章を読んでいても、意外なワードチョイスに出合うと美しさを感じます。音楽であれ、読書であれ、没入できる瞬間が幸せです。固定概念とか、自分が固まっていたことに気づかされるのが好きなんです」と明かした。
この日は、ナイジェリアのラゴスにあるバレエスクールの様子を追ったドキュメンタリー『ナイジェリアのバレエダンサー』、認知症の母の過去の記憶に寄り添う息子の姿を描く『パリ1970年』、そして、パレスチナ難民の少女が、再び故郷の地に帰還することを望む盲目の祖父のために奮闘するさまを描く『パレスチナ諸島』の3本のショートフィルムが上映された。
『ナイジェリアのバレエダンサー』
市川さん自身、普段から映画を観るのは大好きで「ジャンルを問わずいろいろ観ますし、ショートフィルムもギュッと濃縮したところが魅力で、特に映像にものすごく力を入れている作品を観るのが好きです」とのことだが、特にこの日上映された3本のうち『ナイジェリアのバレエダンサー』は「とにかく色が美しい! ヴィヴィッドな色の衣装や車と地面や空とのコントラストが素敵でした。逆境に耐えながら美しいものを作っていくという内面的な美しさも感じましたし、とにかく映像の美しさにうっとりしました。バレエって優雅なんですけど、筋肉を操る独特の緊張感があって、それがワイドショットで捉えられていました」と絶賛する。
別所さんも「バレエに懸ける彼ら・彼女たちのパッション(情熱)の色がにじみ出ていましたね。真っ赤な絨毯や黄色い車の上で踊る姿、水たまりのそばで踊っている姿など、1カット、1カットがあまりに美しすぎました。美しいものを追求する、夢を追い求めるチャレンジする美しさも感じました」と称賛を送っていた。
作品にちなんで、2人にこれまでの人生における“挑戦”の経験を尋ねると、市川さんは「もともと英語が母語なので、初めて日本語で文章を書いた時は、すごく勇気がいりました。お仕事として、拙い言葉でお金をいただく恐怖があって一度、英語で書いて、日本語に訳して、それじゃダメでまた日本語で書いて……。地味な挑戦ですが考えていることを文字に起こす難しさ、怖さがありました」とふり返る。
別所さんは「俳優になろうと決めた大学生の頃、オーディションを受けてアメリカへ行き、そこで生活をしたことはすごいチャンスをいただいた、素晴らしいチャレンジしがいのある出来事でした」と述懐。当時の“覚悟”について「現地に行ってから重大さを知る感じでした(苦笑)。英語も通じず、演技力もままならず、もう一度、演技学校に行ってゼロからやり直しました。そこから積み上げていくのは楽しいと言えば楽しいし、追い詰められた感もありました。契約書も自分で読んで…いま思えば鍛えられました」と語った。
『パリ1970年』
2本目の『パリ1970年』については、市川さんは「短い時間の中での物語の伝え方がすごいですね。絶妙な明るさとその下にある哀しさが刺さりました」と語り、別所さんも「映画を観て、誰しも思い当たることがある方もいるでしょうし、大切な人の死や老いに向きあって感じることがあると思います。じんわりとしますね」としみじみと語った。
『パレスチナ諸島』
3本目の『パレスチナ諸島』については、市川さんは「すごく小さな半径数メートルの家族の話と思いきや、すごく大きな世界情勢を物語っていて、楽しく観つつも複雑なところもありました」と家族の物語を通じて、パレスチナ問題という世界情勢について考えさせられる作品になっている点に言及。別所さんは、2本目の『パリ 1970年』、そしてこの『パレスチナ諸島』のどちらにも、思いやりから生まれた“嘘”が登場することに触れ「映画というのはそもそも壮大な嘘でもあるし、ありたい世界を映し出すものでもあるので、僕は嘘をテーマにした作品を観るとダブルミーニング、トリプルミーニングを感じます」と“嘘”を形にする仕事である俳優ならではとも言える感想を口にした。
市川さんも別所さんも、分野は違えども共に“表現者”だが、仕事に臨む上で大切にしていることを尋ねると、市川さんは自身のモデル活動・文筆活動について「役者さんと違って(モデルは)ファッションやメイクなどを見せるためのものなので、何かを表現するというより『何か役に立てたら』という気持ちの方が大きいです。自分が『かわいい』じゃなく、この服がよく見える参考になればという感じです。文章に関しても、自分が伝えたいものというより、『これを知りたい人がいればいいな』という気持ちで書いています」と語る。
別所さんは「映画や舞台で、“ベターライフ”、“アナザーライフ”という言い方をしますけど、より良き人生・より良き生き方を観た時、人は共感をするし、全く違う人生を見ると、そこにある表現を受け止めて自分の何かが変わっていくところがあります。表現する側もそうですが、きっと表現を受け止めるみなさんのほうにこそ実は価値や意味があるのかもしれません」と表現者としての思いを語る。
最後に市川さんにショートフィルムで心が動かされる設定やテーマ、今後見てみたい作品を尋ねると「SFが観たいですね。ギュッと濃縮した制限の中で作ったSFで、どれくらい世界観を伝えられるのか? SFはいまの自分たちの世界を投影したテーマを描いているものでもあると思うので、それが短い作品でどう投影されるのか見てみたいです」と独特の視点でショートフィルムへの期待を語ってくれた。
MILBON BEAUTY MOVIES
2022年2月にスタートした、ミルボン×「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」によるショートフィルム配信プロジェクト。「美しさを拓く。Find Your Beauty」をコーポレートスローガンに、「美しさを通じた心の豊かさ」の実現を目指すMILBONと共に、世界中から厳選したショートフィルム作品をオンラインで配信しています。心温まる美しいストーリー、心に響く美しい映像や音楽、ワクワク、きらきら、ドキドキ、ほっこり…ショートフィルムで出会える様々な美しさを通じて、ちょっと心が豊かになるような、そんな時間をお届けしていきます。