<イベントレポート>
MILBON BEAUTY MOVIES ショートフィルム上映&トークイベント
~安藤桃子さんを迎えて~ 

<イベントレポート>
MILBON BEAUTY MOVIES ショートフィルム上映&トークイベント
~安藤桃子さんを迎えて~ 

米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア (SSFF & ASIA)」と美容室向けヘアケア・化粧品メーカーの株式会社ミルボンのコラボレーションによるショートフィルム配信プロジェクト「MILBON BEAUTY MOVIES」の上映イベントが8月3日にミルボン本社にて開催されました。

映画監督であり、高知県にあるミニシアター「キネマM」の代表を務める安藤桃子さんがゲストとして登壇しました。

一番好きな映画というのは思い出と共にある

まずは、安藤さんと映画との出会いについて。俳優で映画監督でもある奥田瑛二さんとエッセイストの安藤和津さんを両親に持ち「小さな頃から映画は身近で『表現する』ということが自然と周りにありました」とふり返ります。

そんな安藤さんの幼少期の忘れられない映画で、いまでも大好きだという作品は?

「一番好きな映画というのは思い出と共にあるものだと思います。私は『ネバーエンディング・ストーリー』を見て、あの世界に引き込まれ、いまも自分の中にあります。ファルコンというドラゴンが出てくるんですけど、いまでも時々、空を飛んでいる気がするくらい大好きです」と明かしてくれました。

全ての人はクリエイティブで、人生は映画そのもの

安藤さんは、映画は「私たちの想像と共にある」と語ります。約10年前に移住した高知では、小学生の映画製作をサポートする活動も行なっていますが、子どもたちが映画に触れることの意義について、「監督をしていて思うのは、映画は誰かの想像から生まれたシナリオを具現化する――夢をかなえられる仕事なんです。映画をつくる体験をしてもらうことで、想像したことが創造されるという経験をしてもらえる。それは子どもたちが成長していく過程で、『できない…』と思っていたこと、『こうしたい』と思っていたことが『できた!』という貴重な体験になる。観ることも同じで、映画館で知らない人たちと一緒に映画を観るというのは尊い、大人にとっても子どもにとってもスペシャルな体験だと思います」と熱く語りました。

さらに「私の大好きな考え方なんですけど、10人が1枚の絵を見ても『美しい』と感じる人、『懐かしい』と感じる人、涙が出る人、何も感じない人…それぞれ感じ方が違う。それは絵にアートがあるんじゃなく、見る側にアートがあるから。絵は、それを見て感じる存在があって初めてアートになるんです。映画もそうで、観客がいなければただの映像だけど、観る人の感性や記憶によって、夫との初デートを思い出す人もいれば、幼少期を思い出す人もいる。全ての人はクリエイティブで、人生は映画そのもの」と単なる娯楽を超えた存在であると語りました。

“ありのままで”――その姿が美しい

さらに話題は“美”について。映画監督として、人間や自然の美しさをカメラで捉えてきた安藤さんですが「基本的に、私はあらゆるものが『美しい』と感じています。生きていれば自分を『醜い』と感じる瞬間、『尊い存在だ』と感じる瞬間もあると思いますが、その全てにドラマがある。美しさというのは表面的なものではなく、内側のものが表れるのだと思います」と語ります。

映画に出演する俳優たちは、大きなスクリーンにアップで表情が映し出される瞬間もありますが「年齢を重ねた女優さんがアップに堪えられないというわけでは決してない。その人が正直に心の内を開いてカメラの前に立っているかどうかなんです。ごまかしてフィルタを掛ければ掛けるほど、美しさから離れてしまう。いまの時代、SNSでは“加工”もありますけど、それもひとつのピークに来ている。おじさんがギャルに変身できちゃうけど結局、人間は生身で生きているわけで、本当に自分が『心地よい』と感じる選択をしていきたい。“ありのままで”――その姿が美しいと思います」と言葉に力を込めます。

大事なのは自分にとって自然か不自然か

ミルボンは、美容を通して「心の豊かさ」を育むことの大切さを発信してきましたが、それは、まさに安藤さんの口にする内面の美しさと通じる部分でもあります。安藤さんは、2014年に映画『0.5ミリ』のロケを行なった高知県高知市に移住しました。自然豊かな高知での暮らしの中で日々、心の豊かさを実感していると言います。

当時は深く考えることなく「3秒で(笑)」移住を決めたという安藤さん。「10年という時間をかけて『あの時は素直に感覚に従ったけど、こういう理由だったんだな』と感じることがたくさんあります」とふり返りました。

高知での生活の魅力として、何より感じているのは「自然の豊かさ」。そして、自然の近くで生活を営む中で心の変化を感じたといいます。「それまで全てを良いか悪いかでジャッジしていて、でもそうすればするほど苦しくなっていたんですね。そこで気づいたのは、大事なのは自分にとって自然か不自然かということ。自然を見ていると、雨が降り、川が流れ…全てが自然なんです。いまは、自分の感覚を頼りにして、頭で考え過ぎず、自分にとって自然か不自然かで判断していて、そうすることでノンストレスでいられます」と明かしました。

「一秒でもあきらめたらくじけちゃうものだよ」

この日は、老人ホームで暮らす老女と映画監督という67歳の年齢差のある2人のロードトリップを実写とアニメーションを組み合わせて描いた『Madeleine /マデレーヌ』、そして“水”を巡る壮絶な戦いを風刺も交えてコミカルに描き出す『ウォーター戦争』の2本のショートフィルムを上映。タイプの異なる2作だが、安藤さんは両作品に共通する作り手の感性の鋭さ、ウィットやメッセージ性の豊かさを称賛しました。

『Madeleine /マデレーヌ』では主人公の老女・マデレーヌが「一秒でもあきらめたらくじけちゃうものだよ」という印象的なセリフを発します。

安藤さんに人生で何かをあきらめた経験、もしくはあきらめなかったことを尋ねると、出産を機に「映画監督をやめる」と宣言したという経験を明かしてくれました。それまで、一度たりとも表現することをやめようと思ったことがなかったという安藤さん。「それが子どもを産んだら『お母さんとして生きていきたいからやめる』と言ったんですけど、それは自己否定のような宣言を自分に下した瞬間だったと思います。そこで自分の全てを失ってしまったことに後から気づきました。そこから自分を再構築するのにすごく時間がかかったし、とても苦しかったです。同時に自分が本当に大好きなこと、自分がどう生きていきたいかを見直すきっかけになりました。何かをあきらめる時、そうしたくてする人はいないんですよね。だから、そう思った時は、本当に自分に対して優しくしてあげる必要があると思います」としみじみと語ります。

一方で、映画制作の現場においては「“あきらめる”という言葉すらよぎらない(笑)」と語る安藤さん。「現場では不可能なことがたくさん出てくる。天候や場所もそう。日常茶飯事です。そういう時は、角度を変えて見ることが大事。A案がダメならB案、C、D…角度を変えて見ることで、A案を凌駕した表現が生まれることもある。それを楽しむようにしています」と力強く語りました。

私たちはどこまでも成長できるし、終わりがないのが人生

最後に安藤さんは改めて、自身が人生を通じて関わってきた映画というメディアの魅力について「生きていて『不幸になりたい』と思っている人はいなくて、時に落ち込むことがあるのも『幸せになりたい』という思いがあるからなんですよね。映画って、宇宙だったり、見たことのない世界だったり、どこにでも連れて行ってくれるし、総合芸術ですから、感性やクリエイティビティを豊かにしてくれます。

ぜひ映画を観て、自分が知っている世界だけではない場所につながって、想像力や夢を広げていってほしいです。私が『美しいな』と思う方は、みなさん感性がすごく豊かです。まさに今日の映画のマデレーヌがそうで『またひとつ、新しいことを学んだわ』と言っていましたね。私たちはどこまでも成長できるし、終わりがないのが人生。映画を観ることで『また新しいことを知った!』となって、美しさが育ち、深まっていくと思います」と語り、会場は温かい拍手に包まれました。

上映した2作品、『Madeleine /マデレーヌ』と『ウォーター戦争』はMILBON BEAUTY MOVIESのサイトより無料配信中。

Aabout MILBON BEAUTY MOVIES

2022年2月より、ミルボン×「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」によるショートフィルム配信プロジェクト「MILBON BEAUTY MOVIES」がスタートしました!

私たちミルボンは「美しさを拓く。Find Your Beauty」をコーポレートスローガンに、「美しさを通じた心の豊かさ」の実現を目指しています。「MILBON BEAUTY MOVIES」では、世界中から厳選したショートフィルム作品をオンラインで配信。心温まる美しいストーリー、心に響く美しい映像や音楽、ワクワク、きらきら、ドキドキ、ほっこり…ショートフィルムで出会える様々な美しさを通じて、ちょっと心が豊かになるような、そんな時間をお届けしていきます。

https://www.milbon.co.jp/fyb-magazine/movie/