〈イベントレポート〉
MILBON BEAUTY MOVIES ショートフィルム上映&トークイベントを開催
米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」と美容室向けヘアケア・化粧品メーカーの株式会社ミルボンのコラボレーションによるショートフィルム配信プロジェクト「MILBON BEAUTY MOVIES」の上映イベントが、12月7日にミルボン本社(東京・京橋)にて開催されました。
今回は声優の梶裕貴さんをゲストに迎え、2本のショートフィルムが上映されると共にトークセッションが行われました。

小さい頃から、夢を持つことが趣味
温かい拍手で迎えられた梶さん。まずは声優という仕事についてのお話でトークはスタート。声優を志したきっかけについて尋ねると、梶さんは「僕は小さい頃から、夢を持つことが趣味みたいなところがあって、いろんなことに興味・関心がありました。サッカー選手に漫画家、科学者などなど、ひとつのことにのめり込むと、その分野のスペシャリストになりたいという思いが特に強い子どもだったように思います」とふり返り「中学生の時に、声優というお仕事は、何を頑張っても全部、自分の力になる職業だという言葉を知って、いろんなことに興味がある自分にはぴったりなんじゃないか? と衝撃を受けました。もともと、アニメや映画、ゲームが大好きでしたし、それに加えて、どこか自分のアイデンティティを肯定してもらえたような気がして嬉しくて、声優を目指し始めました」と明かしました。

役を通じて、子どもの頃の夢だったサッカー選手や学者になることもできた
「役を通していろんな職業、いろんな人の人生を経験できるのが魅力。ひとつの職業に就いていたらできなかった、声優だからこその経験をさせてもらっています」と語る梶さん。
役づくりのために、格闘技を習ったり、裁判を傍聴したりこともあるといいます。
役を通じて、子どもの頃の夢だったサッカー選手や学者になることもできたことに加え「魔法や剣を使うファンタジーの世界を経験することもできますし、普通は、なかなか日常で口に出すことはない必殺技の名前を叫ぶこともできちゃいますから(笑)。そういった子どもの頃の憧れも実現することができましたね。僕が出演させていただいたサッカーアニメを見てサッカーを始めましたという子もいれば、『梶さんに憧れて声優を目指しました』という方も最近、どんどんと増えてきて、そうやって次の世代につながっていくものなんだろうなと感じています」と声優という仕事のやりがいを語ってくれました。
「進撃の巨人」、「僕のヒーローアカデミア」など、10年単位でひとつの役柄を演じることもあります。梶さんは、役との出会い・縁への感謝を口にし「10年もの付き合いがあると、世間における声や芝居の流行りも遷移するものだと思いますし、僕自身も年齢を重ねて変化した部分も多々あります。『進撃の巨人』で言うと、僕も(同作に参加した10年の間で)結婚をしたり、子どもが生まれたりもして。当然、加齢による声の変化もありますよね。けれど、そうした変化と真正面から向き合っていくことも、ひとつの役を長く演じていく上で、とても大事なことなんじゃないかなと」と役への向き合い方について語ってくれました。

最後のエレンは、10年分の時間を経た自分でなければ、きっと演じ切れなかった
年齢を重ねることでの変化について、梶さんは「そこにネガティブな思いはないです」と語ります。「“美”をテーマにしたイベントでこういうことを言うのもなんですが(苦笑)、そこまで自分は美へのこだわりが強くないというのもあって。ただ、『良い自分でありたい』という思いは常に持っていて、それは見た目だけのことではなく、中身も含めてなんですよ。”経年劣化”なんていう言葉もありますが、もしも身体的な変化があったとしても、それは“劣化”などではなく、あくまでも変化であり、熟成し、より良い自分になっていくということだと捉えていて」と加齢をポジティブに受け止めます。そして、『進撃の巨人』で演じた主人公・エレンを引き合いに「エレンは、最初の頃は血気盛んでエネルギッシュなキャラクター性ですが、終盤にかけて、その様相は身体ともに大きく変わっていきます。とりわけ最後のエレンは、10年分の時間を経た自分でなければ、きっと演じ切れなかったんじゃないかなと。キャラクターと二人三脚で、じっくりと生きていくことの大切さ――作品を通して、生きてきた証を重ねていくことが大事なんだ、という経験をさせてもらったように思います」と感慨深げに語りました。

続いてショートフィルムの上映が行われ、戦時下のヘルシンキを舞台に、卒業と別離を前にして、政府が定めた禁止令を破って秘密のダンスパーティを敢行する女学生の姿を描いたフィンランド映画『A Day Without Prohibition/禁戒が解けるその日まで』(現在MILBON BEAUTY MOVIESのサイトで無料配信中)、そして、制服を通じて社会の慣習や様々な思いを描き出すイラン発のアニメーション映画『制服の下の私 / Our Uniform』の2本が上映されました。

リアルに生きる人々の姿、その哀しみから、国や時代を超えて訴えかけてくる情念の強さを感じる
梶さんはこの2本のショートフィルムを鑑賞し「尺が長いから濃厚かというと、きっとそんなことはなくて、削ぎ落とすことで逆にストレートに伝わるものもあるんだろうなと、強く感じました」と短い上映時間の中に込められた作品性やメッセージに感動を覚えたと明かしました。
フィンランドには声優イベントに招待されて足を運んだことがあるそうで「自然あふれる街並みで、人もすごく温かく、いつかまた絶対に行きたい場所です」と笑顔を見せます。本作は戦時下のヘルシンキが舞台となっており「あの美しい国にもこういう歴史があって、いまがあるんだと感じさせられました」と感想を話しました。
声優として戦争を描いた作品に数多く参加していますが「そのたびに胸が締め付けられます。それぞれの国に言い分や考えがあって、その土地に生きる人たちの文化や宗教など、複雑な理由があって。一概にどちらが悪だと決めつけられない難しさがあるんですよね」と語り、映画に登場する女学生たちに思いを寄せ「コロナ禍や震災などもそうですが、自分ではどうしようもないことに巻き込まれ、青春が犠牲になってしまう、というやるせ無さが描かれていました。そこにリアルに生きる人々の姿、その哀しみから、国や時代を超えて訴えかけてくる情念の強さを感じました」と共感を口にします。
自分がどう思われたとしても言うべきことは言う

劇中、様々な思いを胸に秘めつつも、なかなか全てを伝えられないもどかしさが伝わってきますが、梶さんは自身について「どちらかと言うと、思ったことは伝えるタイプ。仕事をする上でも、より良いものをつくるために、自分がどう思われたとしても言うべきことは言うし、日常でも、より良いつながりになると思うのであれば、怖がらずに言いますね」と明かします。そこには、先ほども話に出たコロナ禍での思いが関係しているようで「思いもよらない形で今生の別れになってしまうこともある、という現実をすごく強く感じて。親の年齢を考えるきっかけにもなりましたし、会いたい人、会うべき人には会っておかなくては、と思いました。言って後悔することもあるかもしれませんが、それでも自分はアクションを起こした上で『違ったな』と思う方が納得できるので」と思いを語りました。
そうした思いは、他者との関係だけでなく、実際の行動力にも表れているようで、ある時、急遽4日間の休みが取れた際には、思い立って以前から行きたいと思っていたカンボジアのアンコールワット遺跡へのひとり旅を敢行したとのこと。「まさに、自分からアクションを起こして良かった思い出です」と笑顔でふり返りました。

2作目の『制服の下の私 / Our Uniform』は様々な衣服が物語のベースとして活用されており、梶さんは「おそらく制作チームは少人数だと思いますが、ジッパーを上げたり下げたり、縫ったり、シワを表現したりと、いろんな工夫でもって、たくさんのチャレンジしていて、実写とはまた違うインパクトを与えられました」と称賛。作品のメッセージ性についても「何かを否定する気持ちで、ただ“ダメ”と伝えるわけでなく、『自分はこういう疑問や違和感を持っている。けれど、自分はこうありたい』というのを、物語として伝えるショートフィルムが存在するというのは面白いですし、芸術というのはこうであってほしいなと、あらためて感じましたね。“自由”についても考えさせられました」と語りました。
相手を知り、その上で自分はどう思うかを考えることが大事
2作品とも、制限の中で、それでも主人公たちがオシャレを楽しもうとする姿が描かれますが、梶さんは「オシャレって一番身近なエンタメであり、自分という最小限の範囲の中での工夫次第で遊べるところが魅力」と語り、国や地域ごとの文化や伝統、宗教と向き合っていくことの大切さにも触れつつ「その人がその人らしく、生きる上での“自由”を感じられるのが理想だなと思います」と語りました。
さらに、自身が出演した『僕のヒーローアカデミア』の重要なテーマである“エンパシー”という概念にも言及。「個人的な考えですが、他者に共感し、その考え方に納得して共に歩むのが“シンパシー”だとすれば、自分がその意見とは同じ意見かどうかは置いといて、共感とは別のところで理解するのが“エンパシー”。相手を知り、その上で自分はどう思うかを考えることが大事だと思います。こういったショートフィルムがそのきっかけになったら素敵だと思いますし、(上映時間が短いショートフィルムだからこそ)時間に対して、得るものがすごく大きいと思います」とショートフィルムの魅力とあわせて語ってくれました。

最後に梶さんは、改めてこの日のイベントについて、個々の作品のプロモーションでも、ファンクラブの集まりでもなく、普段、あまり出席することのないタイプのイベントであったことに触れ「僕自身、今日がどんなイベントになるのか全く想像がついていなかったのですが(笑)、様々なジャンルの方がいらっしゃっているのが非常に面白く、こういった機会でなければ出会えなかったであろうみなさんとお会いできたことがすごく嬉しいですし、ショートフィルムから感じたことも大きかったです。今日という日がみなさんにとって、ショートフィルムや美容、あるいは声優やアニメに興味・関心を持っていただくきっかけになっていたとしたら幸せです」と語り、笑顔と拍手でイベントが終了しました。
〈MILBON BEAUTY MOVIES〉
ミルボン×「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」によるショートフィルム配信プロジェクト。世界中から厳選したショートフィルム作品をオンラインで配信。心温まる美しいストーリー、心に響く美しい映像や音楽、ワクワク、きらきら、ドキドキ、ほっこり…ショートフィルムで出会える様々な美しさを通じて、ちょっと心が豊かになるような、そんな時間をお届けしていきます。