Awards
受賞情報
SSFF & ASIA 2023 各賞の受賞結果
The award results for SSFF & ASIA 2023
ジョージ・ルーカス アワード(グランプリ)
希望のかけ橋
吉田和泉
オリジナルのアニメーションスタイルで繊細に丁寧に紡がれた物語には観る者を引き込む力があり、また未来を憂いがちな今、特に多くの人々に届けたい作品であった。
ライブアクション部門
インターナショナル 優秀賞
テルエルの彼方へ
マニュエル・オモンテ
大きなテーマが転がっている中で平坦なところにテーマがあり、ふとした出会いで物語が始まるシンプルな設定に良さがある。淡々と積み重ねられていく時間の中からきちんと物語が立ち上がってきて、決して多くは語られないが登場人物たちの過去や内面はしっかりと感じることができ、ショートフィルムとしての面白さに長けていた。
-ライブアクション部門 インターナショナル 審査員
坂井真紀、萩原聖人、横浜聡子
アジアインターナショナル 優秀賞/東京都知事賞
スカベンジャー
マニッシュ・サイニ
美しいビジュアル、その国ならではの映像とユニバーサルなメッセージ性、あらゆる面においてバランスの取れた作品。決して明るいテーマではないが説得力のある演技とコメディ要素を含んだ演出で世界の人の心を動かす作品に仕上がっている。
-ライブアクション部門 アジア インターナショナル 審査員
アダム・トレル、松永大司、MEGUMI
– アダム・トレル(プロデューサー/配給)
ジャンル・制作スタイル・文化が素晴らしく混ざり合い、すべてが高いレベルで描かれていた。多くの新進気鋭の監督たちが、様々な自国の問題にフィルムメイカーとしてどう取り組んでいるかを垣間見られるラインナップであった。「アジャストメント」は非常に保守的な社会から生まれた重要な物語であると同時にあらゆる文化に共鳴するものであり、洗練された美しい撮影と編集がなされている。受賞作の「スカベンジャー」は映像やリズムを駆使しながら、重厚なストーリーをコメディを交えながらわかりやすく伝えている作品であった。
– 松永 大司(映画監督)
短編作品でありながら、観ている人を映画の世界に引き込む力を持った作品に出会えたことはとても幸せな時間であり、全作品、非常に興味深く観させてもらいました。自分は特に俳優への演出という点を重視し、審査をさせてもらいました。「スカベンジャー」は生きていくために背に腹は代えられないという切実さを、主人公を通して愛おしく、そして時に切なく描いた素晴らしい作品でした。「石レンガの家」も非常に完成度が高く、ドキュメンタリーではないかと思うくらい、画面に映る俳優たちはその世界を生きていました。
– MEGUMI(俳優、プロデューサー)
全ての作品が美しく上質な映像であり、作者の強いメッセージ性とそして約20分の中で表す起承転結が見事でとても感動した。「蚕」はコロナ・地域性・貧困・・様々な現代における問題をミステリー要素のあるストーリーに入れ込んでいるのが見事。「スカベンジャー」は死が私たちよりも近くに存在しているインドだからこそ出来た作品。主人公の老人が一言もセリフを言わずに動きや表情だけで見事な芝居をしていたことや、暑くてカラフルなインドを感じる美しい映像が素晴らしかった。
ジャパン 優秀賞/東京都知事賞
半透明なふたり
浜崎慎治
役者2人の繊細な演技がリアルでありながらファンタジーさを表現していて、切なさとユーモアの匙加減が絶妙であった。現代の日本を丁寧に表現しており、世界に向けて発信したい作品。
-ライブアクション部門 ジャパン 審査員
内田也哉子、ダグラス・モントゴメリー、山戸結希
– 内田 也哉子(エッセイスト)
最短で5分、最長でも25分という極めて短い映像の中で、これほどまで色とりどりな世界を展開できるクリエイターたちに圧倒された。『冬子の夏』は冬子役の豊嶋花さんの演技がすばらしく、彼女の存在感と映像美、編集の妙、すべての調和が見事だった。受賞作の『半透明のふたり』は、芥川龍之介の「鼻」に現代的解釈を取り入れ、80年代のポップソングや静謐なモノクローム映像など、監督の愛あふれるディテールと手作り感が感じられ、オリジナリティが際立っていた。この時代を生きる日本人ならではの独特なエッセンスもあり、世界にどう伝わるのかも非常に楽しみな作品。
– ダグラス・モントゴメリー(グローバルメディアの専門家)
“半透明なふたり” は本当に面白かった。この短編は、最初から最後まで私の心をとらえた。文が少年の鼻を踏みつけようとするシーンは鳥肌が立った! もうひとつ、よくできていると思ったシーンは、店内で流れている音楽と少女のヘッドフォンの音楽が一致したことだ。通常、このような突然の場面転換は流れを乱すものだが、この場合は完璧にシーンに合っていた。特に、母親(みずほ)の期待に応えようと様々なルールを守り、「完璧な子供」になろうと努力する小学2年生の美羽には、『スイート』の登場人物全員の感情/心情を感じた。
– 山戸 結希(映画監督)
鮮やかなパフォーマンスに力点が置かれた、見応えが豊かな作品ばかりだった。応募作品を一通り拝見することで、日本の各地にある文化や生活のビジュアルを可視化された作品が並んでもおり、今生きているこの空気を愛したくなるような、今を映し出す魅力と意欲に溢れていた。『空と白と波と母』は、どの世代も観られるような物語の普遍性と、映像の美しさ、豆腐が豆から作られていく様子の映像的比喩が映画的であった。受賞作の『半透明なふたり』は、現代的問題や普遍的なテーマが近代文学へと調和された、力強い作品。画的にもメッセージ的にも完成度が高く、世界に広がる射程を持つ作品だと感じた。
その他部門・公募プロジェクト
ノンフィクション部門 優秀賞
宇宙飛行士の心
ジェニファー・レインズフォード
わすが15分の間に触れたことのない現実と誰もが憧れる夢を体験することが出来るノンフィクションならではの作品力がある。あまり目にすることのない貴重な記録映像としてだけでなくポジティブなエネルギーと人間の可能性を感じることのできる本作はこの時代に多くの人に届けられるべきショートフィルム。
-ノンフィクション部門 審査員
アダム・トレル、松永 大司、MEGUMI
– アダム・トレル(プロデューサー/配給)
興味深いユニークな題材を扱った様々な才能に出会えた。技術的なレベルも非常に高く、どの作品も良いリズムと流れを持っていた。 「戦禍の彫塑工房」はシンプルかつ効果的な方法で宗教による創造と戦争による破壊を力強く描いた作品。「宇宙飛行士の心」は全体的に見やすい構成かつこれまで見たことのない題材で新しい視点を与えてくれる印象に残る作品であった。
– 松永 大司(映画監督)
ドキュメンタリー映画で監督デビューをして以降、フィクションとドキュメンタリーを行き来しながら作品を撮っている自分は今回、記録という意味で貴重な作品を評価させてもらいました。受賞作の「宇宙飛行士の心」は記録としての貴重さだけでなく、映画を観ている人をワクワクさせる力がある作品でした。「さようならまでの時間」は誰もが必ず迎える死の瞬間。それを垣間見られる貴重な作品でした。短編という短い作品でありながら、与えるインパクトは大きなものでありました。
– MEGUMI(俳優、プロデューサー)
国や地域、個人で起きていることをフィルムメイカーのフィルターを通して映像化し、世界の伝えるこのプロセスがとてもエモーショナルであり価値があるものだと強く感じた。以前、ある方から「作品を作るときは、いかに自分の主観を入れられるかが大事」と教わったが、「Dear My Father -The story of a legendary hair dresser-」は娘が作品作りを通して父を一人の人間として改めて知り、リスペクトを向け、自分もこの人の娘なら何かできるかもしれない!と成長できている所がまさに主観であり、この作品が持つ強さだと思った。また受賞作「宇宙飛行士の心」は女性航空医官ブリジットの持つ仕事へのロマン・夢と共に宇宙飛行士のリアルを知れる貴重な作品であった。
アニメーション部門 優秀賞
希望のかけ橋
吉田和泉
台詞に頼らず人形の表情だけでお互いを理解しあっていく様を描く技術は秀逸であった。史実して知られている内容ではあるが、純粋な作風で描かれているので感情移入がしやすく、ダイレクトに心に響く作品。戦争が起こっている今だからこそ一人でも多くの人に見て欲しい。
-アニメーション部門 審査員
稲葉友、渡邉こと乃、杉山知之
– 稲葉 友
同じ部門の中でもそれぞれの扱う題材や描き方、構成など本当に多種多様で、どの作品からも作り手の方々が込めた強いエネルギーが感じられた。『ホザ・カザコ』は、殺伐とした設定に対して日本の教育番組で見られるような可愛らしさや歌に乗せた分の軽妙さがあって面白く、細部のクオリティが目を引く作品であった。最終的には心が動いた作品、特に印象に残ったのが、『希望のかけ橋』だった。この作品にはセリフの無い必然性があり、ストーリーを描く上で非常に効果的だったと思う。歴史的な背景を見ても今多くの人に届いて欲しい映画。
– 渡邉 こと乃
刺激的な作品や技術的に高い作品、表現としてのクオリティの高い作品など、本当に甲乙つけがたい作品ばかりだった。『スケール』は、非常に完成度が高く、飽きさせない作りのアニメーション。絵柄と内容もマッチしていて効果音や音楽も非常によかった。受賞作の『希望のかけ橋』は、史実に基づいたポーランド孤児の話をよくできたストップモーションで表現した作品で、人形造形も巧みで引き込まれた。全23作品の中で一番涙が出た作品であり、内容的に自信を持って推薦できる作品。
– 山戸 結希(映画監督)
受賞作の『希望のかけ橋』は、戦争をリアルに感じる現在において、国も人種も超えて子供たちを助ける姿と、心に傷を持つ子供たちの再生の姿が美しく、希望を与えてくれる作品であった。CG全盛の中、驚異的な演技を見せる人形の動きに、感動した。 ウクライナの戦争がある今だからこそ選ぶべき作品。 また、『ロアルド』もアイデアが秀逸で、キャラクターの動きも素晴らしかった。頭で見えている世界こそが当人にとっての現実であることを認識させられ、現実が揺らぐ現在にぴったりな作品であった。
スマートフォン映画作品部門 supported by Sony’s Xperia 優秀賞
たゆたい
齋藤 汐里
水中撮影が素晴らしく、小さなスマホ画面で撮られた画を、大きなスクリーンで観たいと大いに感じさせてくれた作品であった。ドキュメンタリーでありながらも、作りこまれたフィクションのような完成度があり、彼女の人生観にも共感できた。
―スマートフォン映画作品部門 supported by Sony’s Xperia審査員
内田 也哉子、ダグラス・モントゴメリー、山戸 結希
– 内田 也哉子(エッセイスト)
自由度の高いスマートフォンのおかげで通常のフィルムよりも作者らの心象風景に親密に寄り添った作品が多い気がした。『リーダー』はプロダクションクオリティの高さ、メッセージの明確さ、ショートフィルムならではの良さがあり、携帯で撮ったということに驚かされた。受賞作の『たゆたい』は、ビジュアル的にも美しく、いろんな意味で鮮度のある作品だった。「一水四見」という言葉も印象的で、答えはない、そのプロセスをいかに味わうかが大切というメッセージにも共感できた。
– ダグラス・モントゴメリー
「父と娘のかくれんぼ』は、スクリーンの使用に関してすべての親が直面する課題のひとつを見事に取り上げている。 すべての親が直面するスクリーンの使用に関する課題のひとつを見事に取り上げている。これは、子どもたちに常に携帯電話を使わせたくないという今の時代を反映している。私も親として考えさせられました。短編の中で、彼らが消えてしまうところは予想外の展開で、とてもよくできていた。受賞作の「たゆたい」はとても美しく、見た瞬間からスマホで撮ったことを忘れてしまうほどよくできていた。完全に美紗の世界に引き込まれた。スマートフォンで撮影された映像もストーリーも素晴らしく、とても印象に残りました。この短編は、この物語が語られるために必要な、ちょうどいい時間で作られていると感じた。”
– 山戸 結希(映画監督)
スマートフォンで映像を撮ることの良さに向き合った作品ばかりで、印象に残った作品からは個人のまなざしにカメラという装置が肉薄できることの素晴らしさが伝わってきた。『地球の素肌』は、身軽なスマホだからこそ自然に共同体に近づき、大きなカメラでは捉えられなかったであろう繊細さを上手く捉えていた。『たゆたい』は、映像における光が美しく、スマホでの表現ということを逆手に取り、スマホから見える世界の広がりに驚かせてくれた。主人公の姿を見事に捉えた美的感覚の充実と、語られる内実の豊かさで、スマートフォンで一人の女性、人間の魅力を見事に映し出した作品。
Cinematic Tokyo 部門 優秀賞 / 東京都知事賞
君のかけら
レイモンド・ドーン
東京で生活する留学生がオンラインを経由して外国人に東京の観光スポットを紹介するというコンセプトが本部門に最もマッチしており、アメリカ人監督が描く”東京”という意味でも、グローバルな視点が魅力的な作品。一方で、異国に住む彼氏との遠距離恋愛に悩む主人公の葛藤も感情移入がしやすく、恋の行方がどうなるのか、最後まで興味を引き付けられる作品であった。
U-25 プロジェクト 優秀賞
DOCOOK
羽部空海
独自の感性と発想が光り、オチまでのテンポやバランスが良い。音のクオリティも高く、画の切り取り方や見せ方も素晴らしい。分かり易くてかわいい作品だがオリジナルのアイデアと表現が組み込まれており、空想の世界をアニメーションならではの表現で描いている。
BRANDED SHORTS
各種アワード
地球を救え! 環境大臣賞
砂漠の星
カテリーナ・ハーダー
干ばつの土地に住む子供たち。地を離れる家族が増える中、サッカーの仲間も地を去っていく。淡々と子供たちの心の変化が描かれ、環境問題が背景にある子どもたちの姿を真摯に描いた良作であった。将来のある子どもが主体のストーリーだからこそ大人が考えさせられる場面も多く、子供目線で描かれることで力強いメッセージが伝わってくる作品でした。
J-WAVE SOUND OF CINEMA AWARD
ワイルドサモン
カルニ・アリエリ、ソール・フリード
水辺の環境音のリアリティに強いこだわりを感じる作品であった。自然のスケールに合わせながらアコギの自然の音の融合はまるでダンスを踊るかのよう。水の音によってあたかも自分が水中や水面にいるような臨場感が演出されており、映像とサウンドの効果が相まって、とてもドラマティックな作品に仕上がっている。音楽が入ったり切り替わるきっかけが美しく、ストーリーがよりスムーズに展開していく点も素晴らしかった。
– 坂井 真紀(俳優)
それぞれの国が抱える問題や国を超えて世界が抱える問題などショートフィルムであるからこそどの作品にも強く深くテーマが生き生きと表現されていた。様々な環境の中、一生懸命に生きている人達がどの作品にも存在しており、映画という表現の素晴らしさ、必要性を改めて強く感じ、そこから大きな力をもらった。受賞作の『テルエルの彼方へ』は、説明過多でなく綺麗にまとまりすぎていないからこそキャラクターの人生を垣間見る面白さがあった。また、『ダットサン』の展開の作り方、演出は素晴らしく、少年の疾走感と悲しみに涙がこぼれた。
– 萩原 聖人(俳優)
子どもが印象的に描かれた作品が多く、その子供たちはどれも逞しく、次世代が明るい事を期待させるものだった。その反面、現実社会の問題を痛切に感じさせられる、そんな作品に分かれていたように感じた。『カミーユとコンティさん』は、登場人物全てが愛おしく、俳優のエネルギーが圧倒的に大きい作品。特に母親の演技力に圧倒され、彼女の演技が頭から離れないほどインパクトがあった。受賞作の『テルエルの彼方へ』は、最初と最後でまるで印象の変わる作品。何も関係のないところから物語が生まれるが、人生なんてそんなもの。かぎられた時間の中で孤独になっていく中での勇気が感じられ、ラストは秀逸であった。
– 横浜 聡子(映画監督・脚本家)
全作品俳優が素晴らしく、それぞれに独自の生々しさがあり、物語の中に本当に生きている人として信じることができた。また、撮影技術のレベルの高さ、ロケ場所の選択、美術など、画に映るもの全てへの妥協のなさには目を見張るものがあった。『テルエルの彼方へ』は、主人公が親戚に会った際の他愛ない会話や食卓で歌われる歌にふと自分の故郷の風景を思い出し、異国の地の物語なのになぜだか懐かしい気持ちになった。雨が降り出すシーンもよく、どんな描写も押し付けがましさがなく惹かれた。また、『永遠なる幸福』は、短い時間の中で「物語を映像で観せる」という力に長けていた。主人公の少女のふとした時にみせる、定まり切らない不安定な表情がとても良かった。