【レポート】9月17日(土)Short Shorts Film Festival & Asia OSAKA 2016 Program①

【レポート】9月17日(土)Short Shorts Film Festival & Asia OSAKA 2016 Program①

Short Shorts Film Festival & Asia OSAKA 2016の初回となる9月17日(土)、約1300人のお客様にご来場いただき、大盛況の1日となりました。

9.17(土)Program① 10:30~12:20 受賞プログラムAでは、今年の映画祭で受賞した選りすぐりの作品の上映が行われました。またアフタートークでは、今年ジャパン部門 オーディエンスアワードを獲得した『EVERYTIME WE SAY GOODBYE』の倉田健次監督と出演者のいまいゆかりさんにご登壇いただきました。その詳細をレポートいたします。


 

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『EVERYTIME WE SAY GOODBYE』はどういうきっかけで撮ろうと思ったんですか?
(倉田監督)実際に私の姉が癌になったことがきっかけです。病を状況設定にした作品は、本当に病気を抱えた人への影響もあるし、一歩間違えるとお涙頂戴につながる懸念もあるので、これまで一度も撮ったことがありませんでした。でも実際につきっきりの介護を経験して、自分にも何かできることがあるのではないかと思い、このタイミングで撮ろうと決めました。

 

-癌という状況設定ながらも、すごくユーモアのある作品ですよね。
(倉田監督)重い病を患っていても、実際には日々を生きているんですよね。悲しいだけの話ではなく、人生のおかしみをちゃんと生死の意味につなげたい、病や死というものをもう少し優しく受け止めてほしいと思い、こういう描き方にしました。

 

-映画を見ている最中は笑っていられる作品ですが、見終わった後にグッとくるものがありました。
(倉田監督)ラストシーンの終わり方は、日本人の目にどう映るのか心配でした。日本人はお葬式にしても、一気に悲しみのピークが来て、そのあとは忘れるという感じがありますよね。でも例えばアメリカだと、生きている人が亡き人の思いを背負って生きて行くという姿勢があり、そこへの憧れがありました。

 

-現場はどんな雰囲気でしたか?
(いまいさん)夫婦役の二人が、撮影をしている時もそうでない時も、役柄上の二人のように見えていました。撮影現場にはその二人を守ってあげたいという、暖かい空気が流れていましたね。

 

-どのくらい撮影時間がありましたか?
(倉田監督)撮影自体は正味4〜5日です。でも映画の中では半年ぐらいの時間が流れていたので、時間経過が混ぜこぜにならないように配慮しながら撮影をしました。

 

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-なぜモノクロで撮られたのでしょうか?
(倉田監督)カラーの映画だと観客が色に気を取られてしまいがちなのですが、モノクロだとより役者の心情を注意して見ようとする効果があるんですよね。ただ絵画を見るシーンだけはカラーで撮りました。それ以外のシーンはずっと夫のモノローグだったので、ここだけは奥さんの視点のシーンに切り替えたかったんです。

 

-夫が妻に、名前を呼んで欲しいと言うシーンがありましたね。
(倉田監督)父親の介護をしていた時に、他の人のことは認識できても、僕のことだけ分かってもらえなかったことがあって。夫婦間でも照れくさかったりして、だんだん名前を呼ばなくなっていく人たちも多いですが、やはり人には自分の名前を呼んでほしいという気持ちがあるんだと思います。私も撮影現場だとよく「監督」と呼ばれるので、名前を呼んでほしいという潜在意識が作品に出てしまったのかもしれない(笑)

 

-『EVERYTIME WE SAY GOODBYE』というタイトルに込めた意味を教えてください。

(倉田監督)一つにはエラ・フィッツジェラルドの曲のタイトルからとったというのがあります。またこの夫婦のみの特別なものにはせず、いろいろな人に届いて欲しいという思いを込めて、「EVERYTIME」という言葉を選びました。

 

-いまいさんは普段舞台を中心に出演されていますが、演劇と映画で演じ方の違いはありますか?
(いまいさん)舞台だと繰り返し稽古ができますし、また客席の一番奥まで届けるような大きな表現が求められます。でも映画の場合は繊細さと瞬発的な集中力が求められるので、その点を意識して演じるようにしました。

 

-倉田監督は長編映画とショートフィルムの両方を撮られていますが、作り方に違いはありますか?
(倉田監督)今回有難いことにオーディエンスアワードを頂きましたが、ツチノコの前にももう1本ショートフィルムを撮っていて、正直ショートフィルムを撮るのはものすごく難しいなと感じました。長編映画はシーンの積み重ねで納得や理解というのを作っていくことができますが、短編の場合はそれを短く切り詰めないといけません。ショートフィルムには長編映画と全く違う才能が必要だと思いますし、長編よりももっと広い世界が広がっているのではないかと思います。

 

-最後に一言ずつメッセージをお願いします。
(今井さん)毎年のように大阪の映画祭に遊びに来ていたので、今回大阪で上映が決まって本当に嬉しいです。ツチノコはちょっとユーモラスなシーンもあって、関西の方々にどういう風に見られるのかという不安もありましたが、集中して見て頂いているのが伝わってきました。映画祭の会期中、ぜひたくさんのショートフィルムを観ていってください。

(倉田監督)本作は普段はなかなか恥ずかしくてできない、初めてここまで個人的なメッセージを込めた作品でした。不思議な経緯で生まれた作品なので、何か感じ取っていただけたら、また少しでもお隣の方に優しくしたいと思っていただけたら嬉しいです。ショートフィルムには長編とは違う楽しみ方があるので、ぜひ会期中色々なショートフィルムを楽しんでいただけたらと思います。