ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2015を振り返る
世界各国から集められた5000本以上のショートフィルムがここ東京で競い合うアジア最大規模の短篇映画祭、SSFF & ASIA。2016年度の作品募集開始!! 今年2015年度はどんな模様だっただろうか?
左から、ロットフィ・アコー監督、レザ・ファヒミ監督、岸本司監督
37カ国から85作品が上映された
いまどき、誰だってケータイさえあれば映画なんて撮れるんだし。そんな考えが頭をもたげたとしても躊躇しなくてもいいんじゃないか。誰でも紙と鉛筆さえあれば小説が書けるというのに、誰もが作家になるわけではないのだし。撮りたいという欲望があるのなら、映画を撮ったほうがいい。でも、映画といっても、2時間ほどにまとめなければならないという法なんてない。わずか30分にも満たない時間、観客の目と耳を独占するだけで濃密な体験させることだってできるはずだ。東京では、世界中の25分以下の映画が集まるアジア最大級の国際短篇映画祭が毎年開かれているのだし。
さまざまな部門が門を開いているけれど、たとえばオフィシャルコンペティションでは、各分野からの審査員たちが日本作品を審査するジャパン部門、日本以外のアジア作品を審査するアジアインターナショナル部門、日本を含むアジア以外の世界各国の作品を審査するインターナショナル部門の三部門から優秀賞を選出。さらにその三つの地域から選ばれた作品からグランプリ一作品を選び出す。その一作は、なんとアメリカのアカデミー賞短篇部門のノミネート候補作となる。さらに映画祭終了後1年間は推薦作品として世界の各映画祭へ出品代行してくれるという。
アカデミー賞への架け橋となる今年のオフィシャルコンペでは、どんな作品が賞を獲得したのだろう? 今回は世界各国から応募された4559作品より選出された、37カ国かれ85作品が上映され、しのぎを削った。
2015年グランプリは 「キミのモノ」
ジャパン部門優秀賞(さらに東京都知事賞)を獲得したのは68年沖縄生まれの岸本司監督作品「こころ、おどる -Kerama Blue-」。監督は「沖縄本島沖合にある小さな島々にすっかり魅了され、時には物語の整合性やテーマなどを無視してでも島々の魅力に迫ろうと撮影中は必死でした」と語る。座間味村の民宿に外国人夫妻がやってくる。言葉を理解しなくても次第に民宿の人と仲良くなる妻。一方、宿にも島の環境にも馴染めず不機嫌な夫。固く閉ざした彼の心は海の中であることを気づかされる。そんな物語を語る19分58秒の作品。SSFF & ASIAについては「世界から集まってきた選りすぐりの作品に「世界」を感じることが出来ました。テーマは今日的であったり普遍的であったりと様々ですが、あきらかに世界中で生きるクリエイターたちの想いが伝わる映
画祭でした」と語った。
インターナショナル部門優秀賞を受賞したのは、演劇の制作も手掛けるチュニジアのロットフィ・アコー監督作品「父親」。チュニスでタクシードライバーをしている男・エディは、ある夜、産気づいた妊婦を病院まで乗せる。このつかの間の出会いが予想外の悲劇を生み出してしまう、という18分の作品。この賞はもっとも広範囲の作品対象になっているが、監督は映画祭に参加してどんなことを感じたのだろう。「チュニジアと日本では大きく文化が異なりますが、上映中また上映後のQ&Aセッションで、この映画が日本の観客の皆さんに感動を与え、子供、親、また血のつながりを超えた親子について考えたり感じたてくれたと分かりました。そして、異文化に生きていても人間は同じものを持っているのだということを実感しました」。
そして、グランプリを獲得したのはアジア インターナショナル部門優秀賞を受賞(東京都知事賞も同時受賞)した作品「キミのモノ」。テヘランのスーレ美術大学で映画制作を学んだレザ・ファヒミ監督の短篇第二作目。映画はハッサンとアクバールというふたりの少年を描く。「友情、喧嘩、涙と笑顔の物語です。持っていないものすべてを取り合い、平和はありません。私たちに大きな影響を与えている所有についての会話というのは日常的なやり取りです」「社会の苦しみが苦笑を誘い、笑いによって私はその苦しみを描くことが出来ました」。そして、受賞の喜びをこう語った。「私の人生で最高の瞬間は東京で素敵な人々と「キミのモノ」を観た時、さらに審
査員の方々に気に入っていただけたあの瞬間です。決して忘れられない瞬間です。本当にありがとうござい
ます」。
さて2016年のSSFF&ASIAはどうなるか? ただいま、作品募集中。もしかしたらアナタも檀上に立つことになるかも知れません。
さて、ショートフィルムを観たくなってしまったアナタに朗報です
ストリートアーティスト、シェパード・フェアリーの実話をモチーフにした作品を日本初上映。SSFF & ASIA 2015グランプリ受賞作品を含む全6プログラムを無料上映。米国アカデミー賞やカンヌ映画祭でも上映された世界のショートフィルムをお楽しみいただけます。
□期間/会場
2015年10月14日(水)〜18日(日)/東京都美術館
2015年10月13日(火)〜16日(金)/アンダーズ 東京 51階アンダーズスタジオ
料金:上映無料 ※事前予約受付中
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