特別にセレクトされた世界各国からショートフィルム上映後、去年のSSFF & ASIAグランプリ受賞監督 Yosep Anggi Noen 氏や映画「マラソン」で500万人を動員したチョン・ユンチョル監督に参加を頂き、映画制作について「トーク」いただきます。
各作品のアイデア、脚本、資金調達、予算、キャスティング、 撮影、編集、作品のスタイルについてなど聞くほか、インターネットを中心に未来のショートフィルムの可能性についても探ります。ショートフィルム制作のAからZまで知りたい方はぜひ、動画をご覧ください!!
『フィルムメイカーズトーク』
東野:私、この映画祭のフェスティバルディレクターを務めております、東野 正剛と申します。今日は、こちら映画祭が初めて試みることなのですが、このシダックス・カルチャーホール限定で、映画について、ショートフィルムの作り方について2名の著名で、活躍されている監督をお招きしまして、ショートフィルム作りのAからZまで教えて頂きたいと思っております。
今日は名物司会のジョンさんも通訳に入って頂くので宜しく御願いします。
東野:一人目は、去年のショートショート フィルムフェスティバル & アジアで、見事グランプリを獲得しました、5000本以上、全世界から集まる中で、頂点に立った方です。インドネシアのヨセプ・アンギ・ノエン監督。もう一人の監督は、こちらも特別ゲストなのですが、韓国の2005年、『マラソン』という日本でも大ヒットして、韓国でも500万人以上の動員をした映画の監督であります、チョン・ユンチョル監督。今日、彼のショートフィルムも紹介します。是非、皆さんに楽しんで頂ければと思います。
ヨセプ・アンギ・ノエン監督:こんにちは。去年も映画祭に参加し、また今年も戻ってこられて非常にうれしいです。東京が大好きです。
チョン・ユンチョル監督:韓国の映画学校の時代からこのショートショート フィルムフェスティバル & アジアのことは知っていて、憧れの映画祭でした。ようやくこのような形で来れたことを非常にうれしく思います。皆さんありがとうございます。
東野:では、2作品、去年のグランプリ作品である、ヨセプ・アンギ・ノエン監督の『ホールインワンを言わない女』、そして、チョン・ユンチョル監督のドキュメンタリー作品『バイク・レディー』という作品です。では、2作品続けてお楽しみください。
=作品を視聴=
ありがとうございます。
東野:まずお二人に、簡単に映画の解説をしていただきましょうか。
チョン・ユンチョル監督:去年、ハンドサイクリングのナショナルチームの一員である女性の物語を映画化にするオファーを受けました。韓国郵政局からの製作費援助があり、また韓国の短編映画祭がこの作品をオープニング作品として上映したいと言ってくれたので、作ることにしました。人生の成功物語ではなく、ハンドサイクリングのスピード感や主人公がどういう気持ちでこのスポーツをしたいと思ったのか、なぜ人間は日常のことではなく、何か他の違うものを求めるのかを描きたかったのです。
ヨセプ・アンギ・ノエン監督:2011年に初めて長編映画を作り、イタリアのルカルノ映画祭に選ばれたりなど、この作品で世界中を周ることができました。その1年後、リフレッシュするためにショートフィルムを作りたいと思いました。長編映画の時は、3人のキャラクターの感情を物語にしていったのですが、このショートフィルムは、一つのロケーションで キャラクターを中心にするのではなく、何か政治的なことや自分の国の文化のことなどを強く語りたくて作りました。
東野:ヨセプ・アンギ・ノエン監督の『ホールインワンを言わない女』、今の状況で、その中からゴルフという設定なのですが、そこはどういうアイデアだったのでしょうか。
ヨセプ・アンギ・ノエン監督:私の国では、たくさんの農場を壊してゴルフリゾートが建設されており、ゴルフが問題となっています。他の国ではゴルフは特に問題視されていないかもしれませんが、私の国では問題になっています。ゴルフ場は裕福な人たちのためのものであり、そのために農家の人たちが収入源としている農場が壊されています。私は村で育ち、私の実家から徒歩5分で幼い頃よく遊んでいた所で撮影しました。
私の父も農家と教師を掛け持ちしており、私自身も田んぼで手伝いをしていました。そこから、もしも父親の農場がゴルフ場のために壊されたらどうなるだろうと想像し、この作品を書きました。
東野:ショートフィルムを作るオファーや、長編映画を作るオファーは、チョン監督は受けるのでしょうか。そして受けた時には、まず何が基準になって、それを実現したいと思われるのでしょうか。
チョン監督:このショートフィルム制作に自分のお金は使いませんでした。資金援助があったので一般のショートフィルム制作とは違う過程での制作となりました。資金援助があってのプロジェクトでした。しかし郵政局は映画制作のなかで何かを強制したわけでもなく、彼らは良い映画を作りたいという気持ちで援助してくれましたので、私はとても自由に制作できました。主役の彼女が郵政局で勤務していることもあり、もちろん企業にとっては広告目的もあったと思います。しかし、私は広告目的でこの作品を作りたくありませんでした。私は自由に作らせてもらえましたが、資金援助を受けるかどうかは条件次第です。
東野:ヨセプ・アンギ・ノエン監督の『ホールインワンを言わない女』ですが、先ほどおっしゃったほうに、シチュエーションが田園風景の所で、キャラクター2名。ほぼロケーションはその一つで、お金が掛かってないような感じがするのですが、それももちろん低予算で、ほとんど予算を掛けない形で作ろうとされたのでしょうか。
ヨセプ・アンギ・ノエン監督:低予算の作品でした。唯一使ったのは女性の衣装で、男性の衣装は私のものでした。スタッフも数人でしたので、掛かった費用はほぼ食事代だけでした。自分たちのカメラであるキャノン5Dを使用しました。シンプルに撮影するには充分に素晴らしいカメラです。短い物語だけども、自国の大きな問題や政治的状況を深く描写し、低予算だけども、大きなインパクトが与えられる物語を作りたかったのです。自分の身近で起こっていることを描き たくさんのリサーチをすることで、より深くこの状況を伝えたかったのです。比喩を使うことは、ある意味予算戦略の一つだと思います。例えば、この作品では、ゴルフコースで撮影する代わりに、田んぼで撮影しました。これも予算戦略です。また、私は土地論争について多くのリサーチを重ねました。 ゴルフコースの多くは軍が所有しています。大きな土地を所有できるのは、一つは裕福な人々、もう一つは軍になります。低予算なので、私の家で撮影し、食事も母親が作ってくれました。
東野:監督がおっしゃってる中で非常に大事なのが、これはいろんな監督がおっしゃるのですが、ショートフィルムを作る時に、お金があまり無いのは当然なのですが、そこでびっくりさせるようなアイデアで、何か大きい映画を思い浮かべようというようなことは、ほとんどの成功された監督はおっしゃられなくて、本当に今、監督がおっしゃったように、身近なストーリー、自分が日常に感じていることで、自分の家族の構成であるとか、自分の社会背景であるとか、身近に起こっている自分が感じることをストーリーにして、それを発展させ、ショートフィルムにする方が非常に多くて、ヨセプ・アンギ・ノエン監督の場合もそれが非常に成功したと思います。
東野:チョン監督は、当然学生の頃、映画制作された時にはお金が無かったかと思いますが、監督はそういった場合は、どういう風にして資金調達をされたのでしょうか。
チョン監督:学生時代にショートフィルムを何本か作り、この映画祭を目指して制作もしていました。
資金作りはアルバイトをしたり、コマーシャル制作したり、出来る事全てをしました。ショートフィルム制作は人生との戦いですね。この制作は他とは違うケースで、制作に大変時間が掛かりましたし、困難でした。ハンドサイクリングはとてもスピーディーで、撮影が大変でしたし、体力的にとてもきつかったです。費用面においては、そんなに苦労しなかったですが、制作面では大変でしたので、その点でもバトルですね。スペインでの最終コースは大変急な坂道で、私も一緒に走りながら撮影し、大変過酷でした。
予算を組むのは大変なことですが、自主映画制作者は自身で資金を作るだけではなく、資金援助をしてくれる企業を探すのも大切であることを伝えたいです。そういった企業を探してくるのもショートフィルムメーカーとしての力量となると思います。
東野:チョン監督のお話の中でも、英語で”バトル”という、”戦い”という言葉が何度か出て来たのですが、本当に映画の撮影の場所というか、映画作りも本当に戦いだ、ということが印象的でした。
Part2へ続く Part2は8月中旬の配信予定です。