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【レビュー】ジェーン・バーキン主演のショートフィルム! 『彼女とTGV』

2017年5月24日

『彼女とTGV』
Timo von Gunten/30:00/スイス/ドラマ/2016

作品詳細はこちら
https://www.shortshorts.org/2017/prg/ja/1002

 

ジェーン・バーキンは、フランスを拠点に活動しているイギリス人の歌手&女優です。歌手や映画監督として活動していたセルジュ・ゲンスブールと公私共に深く関わりがあり、1976年に公開された映画『ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ』が今でも代表作として語り継がれています。

 

本年度のショートショート フィルムフェスティバル & アジアでは、そんなジェーン・バーキン主演のショートフィルム『彼女とTGV』が上映されます。この作品は、本年度の米国アカデミー賞の短編部門にもノミネートされた作品で、アカデミー賞プログラムの一部として上映されます!

 

ジェーン・バーキンが演じるのは、スイスの小さな町でブーランジェリーを経営しているエリースという女性。夫には先立たれ、息子のピエールは独立しているため、一人で孤独に暮らしているエリース。そんな彼女の日課が、1日2回家の前を通過するTGV(フランスの高速列車)に向かってスイスの国旗を振ることです。TGVはフランスの高速列車ですが、スイスをはじめとするヨーロッパの各国との間を行き来する列車も運行しています。

 

エリースはある日、彼女が毎日旗を振っているのを見たTGVの運転手のブルーノから手紙をもらい、そこから2人の手紙のやりとりが始まります。このことによって、エリースの孤独な生活に変化が現れます。エリースとブルーノの関係はどのように発展していくのでしょうか…?

 

歳を重ねてから、エリースのように孤独になってしまうという人は、日本も含めて世界中にいるのではないかと思います。『彼女とTGV』を見ていると、新しいことに挑戦したり人生を楽しんだりするのに年齢は関係なくて、人生は自分次第なのだと、前向きな気持ちにさせられます。

 

また『彼女とTGV』で注目すべきポイントは、古くからあるものと新しいものとの関係性の描写です。エリースは、ブルーノの連絡先が知りたくてTGVの運営会社に電話で問い合わせますが、そこでホームページからメールを送るように言われます。パソコンを使いたくないエリースは、タイプライターで手紙を書いてブルーノに送ることにします。インターネットは私たちの生活になくてはならないものになりましたが、エリースのようにタイプライターで手紙を書いて送ってみるのも新鮮でいいですよね!

エリースの ブーランジェリーは、彼女が1人で長年守ってきた小さなお店ですが、町に大手ディスカウントスーパーができたことで、お客さんは減ってしまいます。それでも、安価で質の劣るものを提供するのではなく、値段が高くてもいいものを提供するようにつとめるエリース。日本でも古くからある個人商店の経営が難しくなっている状況にありますが、そういったお店には大手のお店にはない良さがあったりしますし、応援していきたい、と思わせられます。

 

どんどんと新しいものができて便利になっていく世の中ですが、何も考えずに新しいものばかりに飛びついていくのではなく、ちょっと立ち止まって、古くからあるものにも目を向けていきたい、と考えさせられる作品です。

 

作品の中では、エリースの家やブーランジェリー にレトロな小物がたくさん描き出されています。エリースの好きな色はターコイズブルーのようで、エリースの家やお店のいたるところにターコイズブルーのアイテムがあります。エリースが毎日旗を振る窓の色もターコイズブルー。オシャレでレトロなもので作り上げられている作品の世界にもぜひ注目してみてください!

 

『彼女とTGV』は、ショートフィルムとしては長めの30分の作品です。長すぎず、短すぎず、見ごたえもありちょうどいい長さの作品です。上映は6回ほど予定されているので、ぜひ足を運んでみてください!

作品詳細はこちら
https://www.shortshorts.org/2017/prg/ja/1002

—(この記事はボランティアライターの協力で制作されました)—

ライター情報 岡村友梨子

イギリスのロンドン大学キングス・カレッジで映画学の修士号を取得後、拠点をドイツ・ベルリンへ移し、映画のプロダクションとキューレーションに携わる。
執筆のご依頼やメッセージはyurikokamura@gmail.comまで。
Twitterアカウント: lily0146

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